嫌いじゃない。
そんな事を思っていたら、レジの手前から走る足音が聞こえてきてちょうど俺の後ろで止まった。


後ろを振り向いたらそこには瑞穂先輩がいた。



「瑞穂先輩?!なんでここに?」



さっき外に出ていったんじゃ…




「…あんた、その子が好きなの?」



杏ちゃんを指さしながら言う。



「ち、違うよ!」



「じゃあなに?私のこと嫌いになった?それとも付き纏うの飽きた?だから、次はその子の番ってこと?」



「俺、そんなこと別にっ」



ちょ…本当になんなの?嫌いになるわけないでしょ。むしろ大好きだし。



「うっさい!」



バシャッ



「わっ!」



気付けばテーブルの上に置いてあった水をぶっかけられていた。ただただ驚きすぎて放心状態になるしかなかった。




「芹沢なんか大嫌いだ!お前の顔なんか二度と見たくない!」



いつから泣きそうになるほど俺の事嫌になっちゃったの?こんなにも嫌われてしまったのなら、俺は諦めるしかない?



……いや、考え直そう。これは違う。マイナス思考に考えすぎだ。普通に考えればこれって…これって……



ヤキモチだよね?!?!




どうしよう。気付いてしまった。瑞穂先輩…自分で分からないうちに、俺のこと好きになってたんだね。



ニヤけそうになるのをどうにか抑えて先輩に言う。



「先輩こそ意味わかんないんですけど。
もうわかったよ。もう二度と先輩に近づかないし、話しかけもしない」



先輩がビクッと体を震わせて逃げていってしまったが、見えなくなるまでその後ろ姿を目で追った。



はぁっ可愛いかった…流石小動物。



「はる君…君は意外と意地悪な性格をしてたんだね…。瑞穂ちゃんちょっと可哀想だったよ?」
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