音ちゃんにお任せ



「・・・ふぅん。この公式を使う問題が躓いてるんだな。じゃあ、そこを重点的にするか」




私の答案用紙を採点してくれ、一ノ瀬くんが呟く。
そして、私が躓いたところを一つ一つ丁寧に教えてくれます。



「これは、綾瀬が使ったこの式じゃなくて、こっちの公式に当てはめんだよ」

「あ、そうなんですね」

「わかったら、やってみ」

「はい」




一ノ瀬くんの言葉遣いは荒いですが、教え方は丁寧でとても分かりやすい。
私が納得するまで何度も説明してくれるのです。




「あ、あの、一ノ瀬くん。ここは――――」




ある場所で躓き、一ノ瀬くんに聞こうと顔を上げる。
一ノ瀬くんも私の手元を覗き込んでいたようで、至近距離でバチッと視線が合わさった。



「あ・・・」




顔がぶつかってしまいそうな距離に、私は慌てて後ずさる。
一ノ瀬くんも体をそらし、二人して顔を真っ赤に染め上げた。



び、びっくりしました。
あんなに近くにいるなんて・・・。



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