音ちゃんにお任せ
「す、すみません・・・。突然顔をあげてしまって」
「いや、俺も。近づいて見すぎた」
赤らめた顔を隠すように手を額に置いた一ノ瀬くんが少し距離を置いて座り直す。
私も、落ち着かせるように息を吐いて姿勢を正した。
胸だけがドキドキと忙しなく。
落ち着きを取り戻すことができません。
いったい、どうしたんでしょう。
「・・・なんか飲み物とってくる。そろそろ休憩入れたほうがいいだろ」
逃げ出すように一ノ瀬くんが立ち上がると部屋を出てしまった。
パタン、と一人取り残された瞬間、ホッとして胸をなでおろした。
急に、一ノ瀬くんの事を意識してしまいました。
突然あんなに近くに寄ってしまったからでしょうか。
いけません。
一ノ瀬くんは、勉強を教えてくれているだけだというのに。