音ちゃんにお任せ



「一ノ瀬くんは、凄いですね」

「・・・は?」

「バイトを掛け持ちして、毎日忙しいのに、勉強も頑張っていて・・・」



休憩中、思ったことを投げかける。
一ノ瀬くんは少し黙り込んだ後、口を開いた。




「バイトのせいで成績が落ちたって思われたくねぇから」

「え?」

「・・・あいつら、そうでなくても自分たちが俺の負担になってるとか思ってんのに」

「あ・・・」




冬深ちゃんに結斗くん、そして琴心ちゃん・・・。
以前、聞いたことがあります。

バイトをしようとしたけど、一ノ瀬くんに止められたのだと。
一ノ瀬くんは、本当に兄妹想いのいいお兄ちゃんなんですね。




「一ノ瀬くんは、本当に兄妹想いですね」

「・・・頼まれたんだ」

「頼まれた・・・?」

「母親に。・・・泣きながら」




お母さん・・・。




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