音ちゃんにお任せ
「もともと体が弱い人だったのに、子どもが好きでできれば迷うことなく生んでたって。琴心を妊娠した時・・・とうとう医者にも忠告うけてさ」
「え・・・」
「出産に耐えられないかもって」
「そんな・・・」
琴心ちゃんが生まれたということは、それでも、お母さんは産むことを決めて・・・。
「もしかして・・・それで・・・?」
「いや・・・。出産は危なかったらしいけど、その時は乗り越えた。でも・・・、それがきっかけで体調をガクッと崩してそのまま・・・」
「そうだったんですか・・・」
「母さんが亡くなる少し前、病院に呼ばれて。こんなことになってごめんって謝られたんだ。謝られたって、どうしようもないのにな」
一ノ瀬くんは表情を崩さない。
淡々と話している。
「あいつらの事、お願いって・・・。そのまま急変して。俺が、看取った」
「一ノ瀬くん・・・」
「おれだけが、母さんの言葉を聞いて、俺だけが最期を看取って・・・。本当はあいつらだって、居たかったはずで・・・。でも、だから・・・。母さんの最後の言葉知ってる俺が、母さんの代わりにあいつらを護るって決めた」
悲しい、なんて。
辛い、なんて。
私なんかが軽々しくいっていいわけない。
それなのに、溢れる涙は止まらなくて。