音ちゃんにお任せ
唇を噛みしめて、堪えてみても、堪えられるはずもなく。
「・・・なんでこんな話、あんたにしてんだろうな。ごめん。忘れてくれ」
「いやでずっ・・・、わずればぜんっ・・・」
泣き声でボロボロの顔でそういう。
一ノ瀬くんが、私なんかに話してくれた。
その想いを、忘れるなんかできません。
「ずっとずっと・・・おぼえてますっ・・・わすれたりなんか・・・しませんっ」
それが、一ノ瀬くんのためになるとかそんな事ではなくて。
ただ、私が忘れたくないと思う。
それだけのことで。
「バーカ。ぶっさいくな顔」
「ブスなんですー」
一ノ瀬くんが笑いながら私の涙を両手で拭ってくれる。
「はなっ、はなみずっ・・・きたないですっ・・・」
「ぷっ、ほんと、ひでー」
子どもみたいに涙を拭われ、一ノ瀬くんはケラケラと笑っているし。