音ちゃんにお任せ
「はー、でも最悪。引越し屋のバイトはやめないとな・・・」
「え?」
「手首、捻挫してるから重いもの持てないし。あんまり間が空くのも向こうに申し訳ないし。他のところは力仕事とかあんまないから何とかなるけど」
リンゴを持った手を、トンと布団の上に落とし落ち込んだように呟く。
一ノ瀬くん・・・。
「迷惑かけて・・・最低だ」
「一ノ瀬くん・・・。神様からの警告だったんじゃないですか?これ以上無理をするなって」
「え?」
「聞きました・・・。バイトをどんどん増やしているって。一ノ瀬くん、無理をしすぎなんじゃないですか?」
こんな、倒れるまで働いて。
一ノ瀬くんだって、高校生で。
今青春まっただ中で。
本当はもっと、友だちと遊んだり、お出かけしたり。
本当はしたいんじゃないんですか?
「本当に、お金のためですか?そんなに、厳しいですか?私には・・・、お金のためだけとは思えないんです」
「・・・っ」
「もっともっとって、自分を追い込んで・・・。そうやって自分の存在価値を確かめてるように思えるんです」