音ちゃんにお任せ



前に話してくれたお母さんの話。
最期を看取ったのは一ノ瀬くんだから。
だから、誰よりも頑張って。

お母さんの言葉を、頼むねって言われたその言葉を、生きる力にして。




「寂しいから・・・?皆のために働いて、頑張っていれば、お母さんが褒めてくれるから・・・?」

「なに・・・っ」




眉間にしわを寄せ、怒鳴るようにして私を見た。
一ノ瀬くんは一瞬言葉に詰まって視線をまた下に戻した。


私は、溢れる涙を拭うこともしなくて。




「でも、そうやって無理をすることが、お母さんのためになるとは思えません・・・っ!きっと、きっとお母さんは。・・・一ノ瀬くんにだって、幸せになってほしいから」




結斗くんや冬深ちゃん、琴心ちゃんだけじゃない。
一ノ瀬くんにだって。




「だって、一ノ瀬くんだってお母さんにとって大切な子どもなんですから。幸せになって、笑っていてほしいのは、きっと一ノ瀬くんだって同じです」





どうすれば思いは伝わるだろう。
言葉にしても、想いはうまくつたわらなくて。
それでもどうしても伝えたいときはどうしたらいいんだろう。




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