音ちゃんにお任せ
「あんた、今日化粧してる?」
「え、あ・・・。す、少しだけ・・・。お友達がしてくれて」
「お友達?華野じゃなくて?」
「えと・・・はい」
私が、カフェのバイトを代わりに行っていることは一ノ瀬くんには内緒なのです。
そんなことを言うと、すぐにでもバイトに行くと言い出しそうで。
今はもう少し、休んでもらいたいのです。
「へぇ」
「あの、わかりますか?」
「・・・雰囲気が違う」
普段、なにもしていませんからね。
私も自分でも驚きました。
化粧で人はこんなにも変わるものなんですね。
「しゃべりすぎたからもう寝る」
「あ、はい。じゃあ私は帰りますね」
一度もこっちを見てくれないままに私は立ち上がる。
少し、一ノ瀬くんも恥ずかしいのかもしれません。
弱いところを見せたことなんてきっとなかったんでしょうから。