音ちゃんにお任せ



「ちょっと来い」

「あ・・・」

「すみません、オーナー、こいつ借ります」

「瑞己さんっ!?」

「手短にねー」




飯島さんが呼ぶ声と、能天気なオーナーの声を背にうけながら私はバックヤードに連れ込まれた。
バタン、と扉を閉めると騒々しさは消え、静けさが漂う。





「一ノ瀬くん・・・」

「化粧、そういう事かよ」

「あ・・・、接客だからと・・・、由紀子さんが教えてくれて・・・」



恥ずかしい、こんな姿。
一ノ瀬くんに見られたくないです。
俯いて手で顔を隠すようにする。





「はあー」




一ノ瀬くんの大きなため息。
迷惑、でしたよね。
こんな事・・・。


私なんかがでしゃばるべきではありませんでした。




< 213 / 290 >

この作品をシェア

pagetop