音ちゃんにお任せ
真っ直ぐリビングの方へ進み、リビングに入る扉に手をかけたところで中で言い争うような声がすることに気づいた。
「音ちゃんは、お兄ちゃんのためにいろいろしてくれてたんじゃない!なんで、それを踏みにじるようなこと言うのよ!」
その声は、冬深ちゃんの声で私の事を話している様だった。
突然聞こえた自分の名前にドキッと胸を鳴らし、落ち着きなく戸惑ってしまう。
これは、聞いたらまずいような気が・・・。
携帯は諦めて、帰った方がいいですね。
止めに入るのも違う気がして、私はその場から立ち去ろうと踵を返す。
でも、その時一ノ瀬くんの声が聞こえ、私の足は止まった。
「うるせぇな。お前に言われなくてもわかってる」
「なにそれ!どういう意味」
「これ以上、あいつの負担になるようなこと・・・させるわけにいかねぇだろ。わかれよ」
苛立ったようなとげのある声色。
「今回の事は、俺の管理不足だ。それで、あいつの事を巻き込んで・・・。自分にイラついたんだよ。八つ当たりだ。悪かったな」
「なにそれ!それって、音ちゃんのためにしたってこと!?全然伝わってないじゃん!バカじゃん、お兄ちゃん!」
「っ、うるせぇよ!」