音ちゃんにお任せ



「そうか・・・。残念だなぁ。いつになったら、瑞己の彼女を紹介してもらえるんだろうね」

「一ノ瀬くんは、おモテになりますから。きっとそのうち・・・」

「そうかい?瑞己は自分の事をあまり話さないからね。学校でどうなのか、知らないんだ。よかったら教えてくれないかい?」




一ノ瀬くんは、自分の事をペラペラと話すタイプでは確かにないかもしれませんね。
ですが、私も一ノ瀬くんの事をそこまで知っているわけではないのです。

一ノ瀬くんは、一匹狼タイプで、あまり人と関わろうとしません。
でも、そんなことはお父様には言えませんし・・・。




「お優しい方です。以前、行事で山登りに行った時、私が思わず遭難してしまったことがあったんですけど。一ノ瀬くんが探しに来てくれて、助けに来てくれたんです」

「ほお」

「あまり、多くを語らない一ノ瀬くんなので、誤解されやすいですけど、心の中はとても綺麗で優しい人です」




なにかが、伝わればいいと思う。
私が今まで見てきた一ノ瀬くんは、本当に素晴らしい人です。




「そうか。そんな風に、瑞己の事を見てくれる子がいるなんて。瑞己は幸せ者だね」

「いえ、そんな・・・。私は、一ノ瀬くんを怒らせてばかりで・・・迷惑をかけてばかりなんです」

「瑞己は、はっきりした子だから。どうでもいい人には、関わろうとしないからね。気にかけているっていう事は、それだけ瑞己の中で君の存在は大きいという事だよ」





お父様がにっこりとほほ笑む。
雰囲気がどこか一ノ瀬くんに似ていると思いました。

親子、なのだと。




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