音ちゃんにお任せ
「ごめんなさい、私・・・っ。帰ります!」
居たたまれなくなって飛び出した私の腕を一ノ瀬くんが掴んだ。
逃げ出すことが出来なくなった私は、一ノ瀬くんの方に振り向くことができずに立ちすくむ。
「なんなんだよ、それがどうかしたのか?お前、変だぞ?」
「・・・っ、変なんです、私!一ノ瀬くんといると、自分が自分じゃなくなってしまって・・・!」
こんな自分嫌だ。
一ノ瀬くんに迷惑しかかけられない。
嫌な思いしかさせられない。
ずっとそうだった。
初めから。
強引に一ノ瀬家にお世話になることになったことも。
勝手にバイト先に首を突っ込んだことも。
こうして今、勘違いをして一ノ瀬くんを困らせたことも。
「こんな醜い自分っ、一ノ瀬くんに見せたくないのに!だめなんです、一ノ瀬くんの事を考えると!・・・胸が痛くて、苦しくて、モヤモヤしてチクチクして・・・っ!ヤキモチを、焼いてしまうんです!」
こんな自分嫌いだ。
「もう・・・ここにはこれません!」