音ちゃんにお任せ
「一ノ瀬くん・・・」
紛れもなく目の前にいるのは一ノ瀬くんだ。
滲む汗を手の甲で拭い目の前に立っている。
一ノ瀬くんはなにも言わず険しい表情で私を見つめている。
私は気まずさに顔を俯かせた。
「言いたいことだけ言って消えやがって」
ようやく切り出された言葉は、酷く怒っているように聞こえる。
私はビクッと肩を揺らす。
「モヤモヤする?ヤキモチ焼く?・・・・あほか」
一ノ瀬くんは一歩一歩私に近づいてくる。
私は戸惑いながら動き出すことができずにいた。
一ノ瀬くんが私の前に立つ。
右手を私の背に回し引き寄せた。
「――――っ」
「そんなの、俺も同じだ」
一ノ瀬くんの低く響く声が耳に。
私の胸は瞬く間に音をたてはじめる。