音ちゃんにお任せ
「放せって言っても、放してやらない」
「えっ」
再び抱きしめられた身体。
胸がドキドキと苦しくて。
それでも、それが心地よく思えて。
「音」
「っ!」
初めて呼ばれた、自分の下の名前。
耳元でささやくような声に身体が震えた。
「瑞己って、呼んでみ?」
「えっ、あっ・・・」
「ほら、早く」
からかうような声でささやかれる。
私は戸惑い口ごもると、耳元で笑う声が聞こえた。
「ほら」
「・・・っ、み、みずき・・・っ」
意を決して叫ぶように呼んだ。
一ノ瀬くんの腕に力がこもる。