音ちゃんにお任せ
「また一ノ瀬くんの事見てたでしょ」
「え?そんなことは・・・」
パックのアップルジュースを手に呆れたように言うのは、私の親友の華野未江(かのみえ)。
私の友だちというのはおこがましいくらい、可愛らしくおしとやかな女の子。
打って変わって、私は眼鏡で下で二つにくくって、スカートも膝丈という典型的な優等生。
我ながら、不釣り合いです。
「あんま、関わんないほうがいいよー」
「・・・そうなんでしょうか」
「あんまいい噂聞かないしね。いつも遅刻してくるのは、夜の仕事してるんだとか、不良とつるんでるとか・・・」
そう。
一ノ瀬くんにはそんな悪いうわさが纏うのです。
でも、そんなに悪い人には思えないんですけど。
「挨拶、してくれる人に悪い人はいないと思うですけど・・・」
「なにその理屈・・・。いつか痛い目に遭いそうね、音って」
「そうですかねぇ・・・」
とはいえ、一ノ瀬くんに無闇に話しかけたりとか、友だちになろうとかそんなことは私の性格上難しいので。
結局は現状維持なんでしょうけど。