音ちゃんにお任せ



「お兄ちゃんって学校ではどんな感じなんですか?同じクラスなんですよね?」




冬深ちゃんが目を輝かせて尋ねる。
どんな人・・・。
それは、とても難しい質問です。




「私の隣の席なんです。今はまだ出席番号順で。私も綾瀬なので前の方なので・・・」

「そっか―、一ノ瀬だもんね」

「はい。私も、あまりお話したことはないんですけど、挨拶をしたら短くても返事を返してくださるし、とても優しい人だと思います」





そう。
優しい。
兄妹想いだっていう事も知ったし。





「そっか・・・。お兄ちゃん、私たちのためにいろいろ我慢しちゃってるんじゃないかなって思ってて・・・。でも、そうなんです。優しくて、だからつい甘えちゃって」





冬深ちゃんたちが見ているお兄ちゃんの一ノ瀬くんと、学校で見せている一ノ瀬くんはきっと繋がらない。
一ノ瀬くんは、学校では無口でクールで怖がられてる一匹狼。
それを知ったら、皆は傷ついてしまうだろうか。

そんな事を想って、言えなかった。
いう必要も、ないよね。






< 34 / 290 >

この作品をシェア

pagetop