音ちゃんにお任せ
「あんたってさ・・・」
「はい?」
「・・・別にいいや。行くよ」
一ノ瀬くんは私を通り過ぎるとすたすたと歩いて行ってしまう。
え、ええっ!?
「あ、あの・・・」
「早く。あんたの家知らないんだから」
「あの・・・、す、すみません・・・」
一ノ瀬くんて、結構頑固なのかしら。
申し訳ないけれど、ここは素直に甘えておいた方がいいのかもしれません。
きっと、一ノ瀬くんは何と言おうと納得はしてくれない気がしました。
「・・・一ノ瀬くんは、なんのバイトをしているんですか?」
「今日は、ガソリンスタンド」
「今日は・・・、ということは掛け持ちしているんですか?」
「ああ」
本当に、頑張り屋さんです。
バイトなんてしたことのない私には、考えられません。
尊敬の眼差しで見てしまいます。