音ちゃんにお任せ



お昼になると、一ノ瀬くんは教室からいなくなる。
音もなく静かに立ち上がり、なんのあとくされもないようにすっと消えていく。


いつも、どこで食べてるんだろう。




「ちょっと、お手洗いに行ってきます」



未江ちゃんにそう告げていざ、一ノ瀬くんを尾行します。
いつも一ノ瀬くんを見ているっていう未江ちゃんの指摘はあながち間違っていません。



だって、気になるのです。




「あっ」




見失いそうになった一ノ瀬くんを、屋上に上がる階段で見つけた。
でも、屋上は立ち入り禁止になっているはず・・・。



こっそり後をつけていくと、一ノ瀬くんは迷いなく屋上の鍵を・・・。
え、カギ?



ポケットから取り出した鍵を差し込みまわしている。




ええええ!?
なんで鍵を持っているの?




声にならない声で叫ぶと、私は慌てて後を追う。





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