音ちゃんにお任せ



「なんか、いい感じじゃない?一ノ瀬くんと」




並んで一緒に登り始めた未江ちゃんがいつもの企み顔で言う。
いい感じ?なにが、どういう意味?




「いい感じって?」

「バス。大野さんが話してるの聞いちゃったわよ」




大野さんというのは、私の後ろの席の女の子。
バスケの時に一ノ瀬くんに黄色い声をあげていた中の一人です。




「声まで聞こえなかったけど何か話してたって」

「・・・ああ、そんな大した話ではないのです。それに、また迷惑がられてしまいました」

「なにしたの」




私はいつもこうなのです。
ついついおせっかいで手を突っ込み足を突っ込み、そして疎まれる。



わかっていても、性格なのだから仕方ありませんね。




「それと未江ちゃん。喋っていると体力がもちませんよ」

「・・・これ、なんのための山登りか知ってる?」

「親睦のため、ですよね」

「しゃべらずにどうやって親睦深めるのよ」




た、確かに!
迂闊でした。



< 73 / 290 >

この作品をシェア

pagetop