音ちゃんにお任せ
「なんか、いい感じじゃない?一ノ瀬くんと」
並んで一緒に登り始めた未江ちゃんがいつもの企み顔で言う。
いい感じ?なにが、どういう意味?
「いい感じって?」
「バス。大野さんが話してるの聞いちゃったわよ」
大野さんというのは、私の後ろの席の女の子。
バスケの時に一ノ瀬くんに黄色い声をあげていた中の一人です。
「声まで聞こえなかったけど何か話してたって」
「・・・ああ、そんな大した話ではないのです。それに、また迷惑がられてしまいました」
「なにしたの」
私はいつもこうなのです。
ついついおせっかいで手を突っ込み足を突っ込み、そして疎まれる。
わかっていても、性格なのだから仕方ありませんね。
「それと未江ちゃん。喋っていると体力がもちませんよ」
「・・・これ、なんのための山登りか知ってる?」
「親睦のため、ですよね」
「しゃべらずにどうやって親睦深めるのよ」
た、確かに!
迂闊でした。