音ちゃんにお任せ



「で、ですが、私はもうすでに未江ちゃんとは親睦を深めているものだと思っていたのですが・・・」

「だから、私とじゃなくて。一ノ瀬くんと親睦深めてきたら?」

「えっ!?」




ほら、と指差された先には一人気怠そうに登っていく一ノ瀬くんの背中。
ふと見ると、その後ろには噂の大野さんグループの女の子たち。
ぴったり後ろに引っ付いて、声をかけるタイミングを計っている様子。



大野さん、本当に一ノ瀬くんの事が好きなんですね。




好き・・・。
すきとは、一体どういう感情なんでしょうか。





「未江ちゃん。何か、面白がっていない?」

「面白がってるわよ。だって、音の初恋かもしれないでしょ」

「初恋・・・。待って、私、一ノ瀬くんの事そんなんじゃないわよ」

「今がそうじゃなくても、これからそうなるかもしれないでしょ」




これから・・・。
これから、私が一ノ瀬くんの事を好きになるかもしれないということ?
そんな事、あるんだろうか。
恋なんてしたこともない私が。

好きという感情も知らない私が。



どうやったら、一ノ瀬くんを好きになるというのだろう。





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