音ちゃんにお任せ
一ノ瀬くんは、黙々と料理を口に運んでいる。
表情からは、なにもうかがえません。
「お兄ちゃん」
「あ?」
「なんかないの?音ちゃんに」
「なんかって、なに」
冬深ちゃんが一ノ瀬くんをつつく。
私はかあっと顔が熱くなる。
「わ、私はそんな!」
「音ちゃんは黙ってて!」
「え・・・」
「お兄ちゃん、こうやって一緒に食べるの初めてでしょ?いつも音ちゃんが帰った後に食べてるんだから。ちゃんとお礼とか言ってないでしょ!」
冬深ちゃんはそう言いながら頬を膨らませる。
一ノ瀬くんは少し面倒くさそうな顔をするけど箸をおいて私を見た。
「・・・綾瀬。いつもありがとな」
「えっ、い、いえ、そんな・・・」