ヒーローに恋をして
 バン。
 力任せに車のドアを閉じるとスマホを取りだす。焦りで指が滑り、一度、二度と画面ロックのパスワードを打ち間違える。三度目でようやく解除できたスマホを耳にあてた。
「もしもし!」
『ももちゃん? 入って』
 言葉と同時にマンションの自動扉がヴィーと音を立てて開いた。開き切るより先に体を滑り込ませる。

 スニーカーを履いてくればよかった。パンプスなんて走りにくくてかなわない。

 早くも痛みを訴えてる親指を忌々しく感じながら、エレベーターのボタンを乱暴に押した。
< 18 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop