ヒーローに恋をして
「どうしてわからないんだよ」
「わかる必要もありません。その汚いボールをもって、さっさと出て行ってください」
 ユキはそう答えると、ナオトの持っているボールをすっと視線で撫でた。唇に嘲るような笑みが乗る。

「こんなところにいないで、就職活動の準備でも始めたらいかがですか? ボールを網にいれることしか芸のないあなた方が即戦力になるとも思えないので」
 ナオトが目を見開き、怒りに頬を染める。
「あんたみたいな女がトップに立つ会社じゃ、誰もついてこないな」
 その言葉に、ふっとユキの顔が変わる。見開かれた目は緊張と、僅かなとまどいを滲ませる。

 けれど次の瞬間、そんなものなかったかのように彼女は言う。
「いいから出て行きなさい」
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