ヒーローに恋をして
「コウの好きな日本人って、だぁれ?」
そんな質問をされたのは、8th Grade(中学二年生)の時だった。
尋ねてきたのはチームメイトの妹、マナ。彼女はバスケの試合のたびに母親と一緒にセンター席を陣取って、チームのフラッグを振って応援してくれる愛すべきミューズだ。まだ六歳だから、ミューズと言うよりチームのオフィシャルマスコットという印象が強いけど。
日本人会のイベントで迎えに来れない母親に代わって、マナの母親がコウを車でアパートまで送ってくれるという。その車の中、助手席から身を乗り出してマナが尋ねてくる。
「どうしてそんなこと聞くの?」
突然の問いに面食らって聞き返すと、マナはニヤニヤしながら
「ダスティンが言ってたもん。コウは日本にいる初恋の相手が忘れられないんだって。そのひと、有名なアクトレスなんでしょ?」
「こら、よけいなこと言うなよチビ!」
焦ったようにそう言うのは、コウの隣に座るマナの兄、ダスティンだった。弁解がましくコウを振り返って、
「ほらこの間、アンの姉さんがおまえのことデートに誘ってたじゃないか。そんときの返事で」
「俺そんな話、ダスティンにしたっけ」
呆れたように目を細くして見せると、
「いや、アンから聞いたんだ。だけど気になるだろ。おまえがデートの誘いを断るの、これで何回目だ? さっきのゲームの得点より多くないか?」
おどけたように言うチームメイトの言葉に、しかめっ面が苦笑に変わる。
「そんなに多くないよ」
「ねぇ、コウは芸能人と知り合いなの? そのひと有名?」
マナが助手席のシート越しに、期待をこめた目でこっちを見ている。コウはふっと笑みをこぼした。
「ああ。すごく有名」
そんな質問をされたのは、8th Grade(中学二年生)の時だった。
尋ねてきたのはチームメイトの妹、マナ。彼女はバスケの試合のたびに母親と一緒にセンター席を陣取って、チームのフラッグを振って応援してくれる愛すべきミューズだ。まだ六歳だから、ミューズと言うよりチームのオフィシャルマスコットという印象が強いけど。
日本人会のイベントで迎えに来れない母親に代わって、マナの母親がコウを車でアパートまで送ってくれるという。その車の中、助手席から身を乗り出してマナが尋ねてくる。
「どうしてそんなこと聞くの?」
突然の問いに面食らって聞き返すと、マナはニヤニヤしながら
「ダスティンが言ってたもん。コウは日本にいる初恋の相手が忘れられないんだって。そのひと、有名なアクトレスなんでしょ?」
「こら、よけいなこと言うなよチビ!」
焦ったようにそう言うのは、コウの隣に座るマナの兄、ダスティンだった。弁解がましくコウを振り返って、
「ほらこの間、アンの姉さんがおまえのことデートに誘ってたじゃないか。そんときの返事で」
「俺そんな話、ダスティンにしたっけ」
呆れたように目を細くして見せると、
「いや、アンから聞いたんだ。だけど気になるだろ。おまえがデートの誘いを断るの、これで何回目だ? さっきのゲームの得点より多くないか?」
おどけたように言うチームメイトの言葉に、しかめっ面が苦笑に変わる。
「そんなに多くないよ」
「ねぇ、コウは芸能人と知り合いなの? そのひと有名?」
マナが助手席のシート越しに、期待をこめた目でこっちを見ている。コウはふっと笑みをこぼした。
「ああ。すごく有名」