ヒーローに恋をして
私のもの
マンションの前にバンが停まる。現場を出る時からずっと黙っているコウに向かって、
「お疲れさまでした」
そう言って小さく頭を下げる。コウは助手席に座ったまま両腕を組んで、じっと前方を睨んでいる。
「あの」
ためらいがちに声をかけると、低い声が命じる。
「車、なか停めて」
「え?」
「駐車場。どこでもいいから」
どこか苛々した口調でコウは続ける。
駐車場。このマンションのエントランス脇には、たしかに高級車の停まっている駐車場がある。だけど使うには手続きが必要だと聞いてたから、いつも今のようにマンションの前に横付けしてコウを降ろしていた。
「コウさ」
「コウでしょ」
素早く訂正して、コウは焦れたような顔で振り向いた。
「いいから早く」
その後に放たれた言葉は、聞きまちがえだろうか。
今日は、帰さない。
そう言ったように、聞こえた。
「お疲れさまでした」
そう言って小さく頭を下げる。コウは助手席に座ったまま両腕を組んで、じっと前方を睨んでいる。
「あの」
ためらいがちに声をかけると、低い声が命じる。
「車、なか停めて」
「え?」
「駐車場。どこでもいいから」
どこか苛々した口調でコウは続ける。
駐車場。このマンションのエントランス脇には、たしかに高級車の停まっている駐車場がある。だけど使うには手続きが必要だと聞いてたから、いつも今のようにマンションの前に横付けしてコウを降ろしていた。
「コウさ」
「コウでしょ」
素早く訂正して、コウは焦れたような顔で振り向いた。
「いいから早く」
その後に放たれた言葉は、聞きまちがえだろうか。
今日は、帰さない。
そう言ったように、聞こえた。