ヒーローに恋をして
試合開始
コウの隣に、五十か六十か、日焼けした肌で年齢が曖昧になった男が笑って立っている。腹は丸く出ているものの、はっきりした目鼻立ちから昔は女性に人気があっただろうと思わせる。
「ほんとにね、ビックリしましたよあんな記事が出て」
男が――ユリアが所属するフィールド・ライツプロダクションの社長、武井が豪快に笑う。彼らを囲むマスコミが一斉にフラッシュをたいた。強い光にご注意ください、の文字が画面の左端に出る。
「もともとウチのユリアが怪我で降板することになったんだから、どっちかっていうとウチが監督やスタッフさんにご迷惑をかけたんですよ」
それをあんな風に書かれて、もう冷や汗もんでしたよと言ってまた笑う。
「な、君にも迷惑かけたな」
武井が大きな手でコウの背をドンと叩くと、記者から質問が飛ぶ。
「コウさん、記事にはトウコさんと熱愛と書かれてましたけど」
コウが笑顔で首を横に振る。
「彼女、僕のマネージャーもやってるんです。代役を探してるときにちょうど現場にいて」
笑みを浮かべながら続ける。
「昔監督の作品に出たことがあるらしくて、そういう縁で急きょオファーが決まったみたいです。僕も驚きました」
いくつものカメラがコウを囲む中、コウは言った。
「だから、彼女は全然関係ないんです」
尚も質問しようとするマスコミの間に、武井が制するように手を伸ばす。
「あんたたち、聞くなら映画のことにしなさいよ、映画の」
「社長、コウさんのマネージャーみたいですね」
記者の一人が冗談めかして言うと、武井はやたら白い歯を見せて笑った。
「まぁそんなもんだね、近いうちにウチの売れっ子になってくれるんじゃないかって、期待してるし」
その言葉に、記者が一斉にどよめく。フラッシュがいくつもたかれる。
「社長、今のはどういうことですか」
「コウさんがフィールド・ライツに移籍するという意味でしょうか」
武井は笑いながら大きな手を振って、
「これ以上はまだ言えないな。これから色々詰めるところだから」
その発言に、また記者がフラッシュをたく。
コウはその隣でずっと、ふわりと笑みを浮かべて立っていた。
「ほんとにね、ビックリしましたよあんな記事が出て」
男が――ユリアが所属するフィールド・ライツプロダクションの社長、武井が豪快に笑う。彼らを囲むマスコミが一斉にフラッシュをたいた。強い光にご注意ください、の文字が画面の左端に出る。
「もともとウチのユリアが怪我で降板することになったんだから、どっちかっていうとウチが監督やスタッフさんにご迷惑をかけたんですよ」
それをあんな風に書かれて、もう冷や汗もんでしたよと言ってまた笑う。
「な、君にも迷惑かけたな」
武井が大きな手でコウの背をドンと叩くと、記者から質問が飛ぶ。
「コウさん、記事にはトウコさんと熱愛と書かれてましたけど」
コウが笑顔で首を横に振る。
「彼女、僕のマネージャーもやってるんです。代役を探してるときにちょうど現場にいて」
笑みを浮かべながら続ける。
「昔監督の作品に出たことがあるらしくて、そういう縁で急きょオファーが決まったみたいです。僕も驚きました」
いくつものカメラがコウを囲む中、コウは言った。
「だから、彼女は全然関係ないんです」
尚も質問しようとするマスコミの間に、武井が制するように手を伸ばす。
「あんたたち、聞くなら映画のことにしなさいよ、映画の」
「社長、コウさんのマネージャーみたいですね」
記者の一人が冗談めかして言うと、武井はやたら白い歯を見せて笑った。
「まぁそんなもんだね、近いうちにウチの売れっ子になってくれるんじゃないかって、期待してるし」
その言葉に、記者が一斉にどよめく。フラッシュがいくつもたかれる。
「社長、今のはどういうことですか」
「コウさんがフィールド・ライツに移籍するという意味でしょうか」
武井は笑いながら大きな手を振って、
「これ以上はまだ言えないな。これから色々詰めるところだから」
その発言に、また記者がフラッシュをたく。
コウはその隣でずっと、ふわりと笑みを浮かべて立っていた。