ヒーローに恋をして
トゥルルルル。
事務所の外線が鳴る。電話を受けた事務員の声を、フロアに流れているアイドルの曲がかき消している。また別の電話が鳴る。事務員の隣に座るアルバイトの女の子は、イヤホンをつけながら公式サイトを更新していて気づかない。
「はいスター・フィールドです」
桃子が電話に出ると、声に被せるように電話口の相手が言う。
『コウさんの移籍についてなんですが』
立て続けに飛んでくる質問を聞きながら、視線をデスクへと落とす。そこに丸めて置いてあったポスターを広げた。
色校からあがってきたばかりのポスター。ジャージ姿の男とパンツスーツを着た女が、互いに挑戦的な笑みを浮かべて向かい合っている。二人の間にはバスケットボール。そしてポスターを横断するように書かれている、『試合、開始』の文字。
文字を目で追って、微笑んだ。笑みを浮かべたまま、電話口の相手に言う。
「コウの移籍について記者会見を開きます。事務所までお越しください」
ピーッ。
審判がホイッスルを吹く音が、聞こえた気がした。
試合開始だ。
事務所の外線が鳴る。電話を受けた事務員の声を、フロアに流れているアイドルの曲がかき消している。また別の電話が鳴る。事務員の隣に座るアルバイトの女の子は、イヤホンをつけながら公式サイトを更新していて気づかない。
「はいスター・フィールドです」
桃子が電話に出ると、声に被せるように電話口の相手が言う。
『コウさんの移籍についてなんですが』
立て続けに飛んでくる質問を聞きながら、視線をデスクへと落とす。そこに丸めて置いてあったポスターを広げた。
色校からあがってきたばかりのポスター。ジャージ姿の男とパンツスーツを着た女が、互いに挑戦的な笑みを浮かべて向かい合っている。二人の間にはバスケットボール。そしてポスターを横断するように書かれている、『試合、開始』の文字。
文字を目で追って、微笑んだ。笑みを浮かべたまま、電話口の相手に言う。
「コウの移籍について記者会見を開きます。事務所までお越しください」
ピーッ。
審判がホイッスルを吹く音が、聞こえた気がした。
試合開始だ。