レインボウ☆アイズ
待ち合わせ
いい天気だなあ。駅の広場のベンチで咲葉さんを待ちながら、空を見上げて思う。
心臓は飛び出しそうに動いているが、それは無視だ。
携帯の時計を見る。12時半ぴったり。
咲葉さんが時間前に来ることは、ない気がしていた。正解だった。
で、いつ来るのかな…。忘れてたりして…。いや、でも…。
悶々としていると、見覚えのある女の人が近づいてきた。
「敦哉君。ごめんね、急に誘っちゃって。」
『急いで来てよかった。やっぱり時間通りに来る子だった』
少し息切れしながら、咲葉さんは言った。
「大丈夫です。…会えて、嬉しいです。」
修にそのままでいいと言われたからだろうか、正直な声が出た。
「よかった…。ラーメンの話してたら、どうしても食べたくなっちゃって。」
『嬉しい、だって。可愛い』
早速可愛いと思われて、また嬉しい。正直に言ってよかった。
「あっちだよ。…敦哉君、ラーメン好き?」
咲葉さんは指差しながら歩き始める。
『きっと、そうでもないよね』
咲葉さんの心の声を聞き、安心して答える。
「実はあまり食べたことがないです。」
「だよねー。何かそんな感じがしたー。
メールもずっと敬語だし、制服も私立だよね…。
敦哉君って、おぼっちゃんでしょ。」
『服も実は高級そうだし』
何だかすごくバレてる…。咲葉さんってすごいなあ。
でも、おぼっちゃんでしょって言われて、
はい、と答えるのはどう考えてもかっこ悪い。
「そんなことないです…。」
俺がうつむきながら言うと、咲葉さんは立ち止まった。
「そうかなあ…。お店、ここね。よかった、並ばずに入れる。」
ドアを開けて入ると、いらっしゃいませー、と複数の威勢のいい声で出迎えられる。
…確かに女の人ひとりじゃ入れないな。
「カウンターでよろしいですか?」
タオルを頭に巻いた男の人に言われて、
「はい。」
と咲葉さんが答える。
「こちらどうぞー。」
言われた席を見ると、椅子が横に並んでいる。咲葉さんと向かい合わなくていいんだ。
目が合う確立が減るし、食べるのを正面から見られないで済む。よかった。
椅子に座ると、咲葉さんはすぐにメニューを取って見せてくれる。
「敦哉君、ここ来たことないよね?普通のラーメンでいい?」
「あ、はい。」
「すみませーん。ラーメン二つと生ひとつ。」
咲葉さんがキッチンにいる男の人に言う。…実はひとりでも平気っぽい…。
でも、生ってなんだろ、と思っていると、
「はい、生でーす。」
と言って、お店の人がビールを持ってきた。
「はーい。」
受け取る咲葉さんは、すごく嬉しそう。
「ごめんね、未成年の前で。」
『わーい、生ビールだー』
謝っている言葉とはうらはらな笑顔と心の声に、俺は笑ってしまう。
「大丈夫です。」
「ありがとう。じゃ、いただきまーす。」
咲葉さんは、本当にお酒が好きなんだな。
見ているこっちまで嬉しくなるような笑顔だ。
微笑ましく見ていると、不意に咲葉さんは言った。
「敦哉君、ビール飲んだことある?」
「…ないです。」
あるわけないじゃん、と思い、驚いて答える。
「やっぱりねー。」
『おぼっちゃんだ』
そうなんだ。こういうところでバレるんだ…。変なところで納得してしまう。
生ビールをぐびぐびと飲む咲葉さんに、ふと思って聞く。
「ビールって美味しいんですか?」
「おいしいよー。すべてがどうでもよくなる。」
その言葉に、俺は思わず笑って答える。
「でも…咲葉さんて、もとから細かいこと気にしてなさそうです。」
「あ、ばれた?」
『なんだか打ち解けてくれて、嬉しい』
咲葉さんは笑って、またビールを飲む。
俺も嬉しい。お酒のおかげで、すごく仲良くなれてる気がする。
そんなことを考えていると、ラーメンがやってきた。
咲葉さんは、俺にわりばしを渡して言った。
「はい。…わりばしの使い方わかる?」
「さすがにわかります。」
俺が少しむっとして言うと、咲葉さんは笑う。
『かわいー』
…可愛いかあ。嬉しいけど、何だかそれでいいのかなって気もする。
おぼっちゃんで可愛いだけの男を、咲葉さんは好きになるんだろうか。
ラーメンをつつましくすすりながら思う。…俺、よくばりだな。
話せるだけでいいと思ってたのに、もっと仲良くなりたくなってる。
あわよくば、俺のことを好きになってほしいと思ってる。
好きって心の声でもいいから聞きたい。
でも、豪快にラーメンを食べられない男じゃあダメだろうか、と思って見ると
咲葉さんもゆっくりつつましく食べていた。
俺の視線に気づいて咲葉さんは言った。
「なんか、ビールでお腹いっぱいになっちゃった…。」
『せっかく久しぶりに来れたのに』
すごく残念そうだ。
「無理しないで残してください。食べたくなったら、また来ましょう。」
「うん。ありがとう。」
『優しいな…なんか身に沁みる』
身に沁みる?優しくされてないのかな。
働いてると、色々あって大変なんだろうか。
俺なんか、学校ではぼーっとしてればいいし、
目が合って変な声を聞かなければ、なんてことない毎日だ。
最近は咲葉さんがいるせいか、気にならないし。
もっとなにか、咲葉さんのためにしてあげたいな…。
「だめだー。もう食べれない。次はビール飲むの、やめる…。」
少しだけ残ったラーメンを悔しそうに見つめて、咲葉さんは言った。
「また食べたくなったら、いつでも呼んで下さい。」
「うん。ありがとう…。じゃ、行こうか。」
『待ってる人いるし』
咲葉さんが見たほうを見ると、ドアの外に並んでいる人がいた。
そして、目が合ってしまう。
『デートでラーメン屋来るなよな…』
明らかに機嫌の悪そうな声だけど、デートと呼ばれて悪い気はしない。
嫌な声も、俺の気持ち次第なんだな、と思いながら、咲葉さんと店を出た。
心臓は飛び出しそうに動いているが、それは無視だ。
携帯の時計を見る。12時半ぴったり。
咲葉さんが時間前に来ることは、ない気がしていた。正解だった。
で、いつ来るのかな…。忘れてたりして…。いや、でも…。
悶々としていると、見覚えのある女の人が近づいてきた。
「敦哉君。ごめんね、急に誘っちゃって。」
『急いで来てよかった。やっぱり時間通りに来る子だった』
少し息切れしながら、咲葉さんは言った。
「大丈夫です。…会えて、嬉しいです。」
修にそのままでいいと言われたからだろうか、正直な声が出た。
「よかった…。ラーメンの話してたら、どうしても食べたくなっちゃって。」
『嬉しい、だって。可愛い』
早速可愛いと思われて、また嬉しい。正直に言ってよかった。
「あっちだよ。…敦哉君、ラーメン好き?」
咲葉さんは指差しながら歩き始める。
『きっと、そうでもないよね』
咲葉さんの心の声を聞き、安心して答える。
「実はあまり食べたことがないです。」
「だよねー。何かそんな感じがしたー。
メールもずっと敬語だし、制服も私立だよね…。
敦哉君って、おぼっちゃんでしょ。」
『服も実は高級そうだし』
何だかすごくバレてる…。咲葉さんってすごいなあ。
でも、おぼっちゃんでしょって言われて、
はい、と答えるのはどう考えてもかっこ悪い。
「そんなことないです…。」
俺がうつむきながら言うと、咲葉さんは立ち止まった。
「そうかなあ…。お店、ここね。よかった、並ばずに入れる。」
ドアを開けて入ると、いらっしゃいませー、と複数の威勢のいい声で出迎えられる。
…確かに女の人ひとりじゃ入れないな。
「カウンターでよろしいですか?」
タオルを頭に巻いた男の人に言われて、
「はい。」
と咲葉さんが答える。
「こちらどうぞー。」
言われた席を見ると、椅子が横に並んでいる。咲葉さんと向かい合わなくていいんだ。
目が合う確立が減るし、食べるのを正面から見られないで済む。よかった。
椅子に座ると、咲葉さんはすぐにメニューを取って見せてくれる。
「敦哉君、ここ来たことないよね?普通のラーメンでいい?」
「あ、はい。」
「すみませーん。ラーメン二つと生ひとつ。」
咲葉さんがキッチンにいる男の人に言う。…実はひとりでも平気っぽい…。
でも、生ってなんだろ、と思っていると、
「はい、生でーす。」
と言って、お店の人がビールを持ってきた。
「はーい。」
受け取る咲葉さんは、すごく嬉しそう。
「ごめんね、未成年の前で。」
『わーい、生ビールだー』
謝っている言葉とはうらはらな笑顔と心の声に、俺は笑ってしまう。
「大丈夫です。」
「ありがとう。じゃ、いただきまーす。」
咲葉さんは、本当にお酒が好きなんだな。
見ているこっちまで嬉しくなるような笑顔だ。
微笑ましく見ていると、不意に咲葉さんは言った。
「敦哉君、ビール飲んだことある?」
「…ないです。」
あるわけないじゃん、と思い、驚いて答える。
「やっぱりねー。」
『おぼっちゃんだ』
そうなんだ。こういうところでバレるんだ…。変なところで納得してしまう。
生ビールをぐびぐびと飲む咲葉さんに、ふと思って聞く。
「ビールって美味しいんですか?」
「おいしいよー。すべてがどうでもよくなる。」
その言葉に、俺は思わず笑って答える。
「でも…咲葉さんて、もとから細かいこと気にしてなさそうです。」
「あ、ばれた?」
『なんだか打ち解けてくれて、嬉しい』
咲葉さんは笑って、またビールを飲む。
俺も嬉しい。お酒のおかげで、すごく仲良くなれてる気がする。
そんなことを考えていると、ラーメンがやってきた。
咲葉さんは、俺にわりばしを渡して言った。
「はい。…わりばしの使い方わかる?」
「さすがにわかります。」
俺が少しむっとして言うと、咲葉さんは笑う。
『かわいー』
…可愛いかあ。嬉しいけど、何だかそれでいいのかなって気もする。
おぼっちゃんで可愛いだけの男を、咲葉さんは好きになるんだろうか。
ラーメンをつつましくすすりながら思う。…俺、よくばりだな。
話せるだけでいいと思ってたのに、もっと仲良くなりたくなってる。
あわよくば、俺のことを好きになってほしいと思ってる。
好きって心の声でもいいから聞きたい。
でも、豪快にラーメンを食べられない男じゃあダメだろうか、と思って見ると
咲葉さんもゆっくりつつましく食べていた。
俺の視線に気づいて咲葉さんは言った。
「なんか、ビールでお腹いっぱいになっちゃった…。」
『せっかく久しぶりに来れたのに』
すごく残念そうだ。
「無理しないで残してください。食べたくなったら、また来ましょう。」
「うん。ありがとう。」
『優しいな…なんか身に沁みる』
身に沁みる?優しくされてないのかな。
働いてると、色々あって大変なんだろうか。
俺なんか、学校ではぼーっとしてればいいし、
目が合って変な声を聞かなければ、なんてことない毎日だ。
最近は咲葉さんがいるせいか、気にならないし。
もっとなにか、咲葉さんのためにしてあげたいな…。
「だめだー。もう食べれない。次はビール飲むの、やめる…。」
少しだけ残ったラーメンを悔しそうに見つめて、咲葉さんは言った。
「また食べたくなったら、いつでも呼んで下さい。」
「うん。ありがとう…。じゃ、行こうか。」
『待ってる人いるし』
咲葉さんが見たほうを見ると、ドアの外に並んでいる人がいた。
そして、目が合ってしまう。
『デートでラーメン屋来るなよな…』
明らかに機嫌の悪そうな声だけど、デートと呼ばれて悪い気はしない。
嫌な声も、俺の気持ち次第なんだな、と思いながら、咲葉さんと店を出た。