レインボウ☆アイズ
思考停止
それから俺の頭は思考停止していた。何も考えたくなかった。
だから朝も、電車に乗るか迷った。でも、突然いなくなるのは咲葉さんに失礼だ。
ちゃんと直接ありがとうって言って、車通学に戻ろう。
もう考えたくない。咲葉さんを疑う自分が嫌だ。
本当のことを言えない自分も嫌いだ。もう、逃げちゃおう。
今の俺には逃げることしかできない。
「おはよう。敦哉君。」
『今日も会えて嬉しい』
顔をあげると、笑顔の咲葉さんがいた。
「おはようございます…。」
優しい心の声に面食らいながら、俺は答える。
『何だか元気ないな』
すかさず俺の表情を読み取った、咲葉さんの心の声が聞こえる。
何もかもが優しい。昨日の寂しげな咲葉さんは何だったんだ?
本当に仕事で疲れていただけだったのかな。
でも、優しくしないで、って言った声は?ごめんね、って何度も言ったのは?
混乱しながらも、俺は咲葉さんと電車に乗った。
いつものように向かい合って立つ。
やっぱり咲葉さんと目が合って、声が聞こえた。
『何となく、お別れは伝わるものなのかな』
…どういうこと?お別れって、ナニ?もうわからない…。
俺は自分も別れを言おうとしていたことすら忘れて、苛立っていた。
もういいや。全部言おう。どうせお別れなら。
「咲葉さん、恋人いますか?」
自分の冷たい声にびっくりした。そして、即、後悔した。
咲葉さんは驚いて、目を丸くしている。そして、言った。
「いないよ…。」
『いないけど…』
咲葉さんはすぐに目をそらした。
俺の中で、安心と不安がマーブルのように入り混じる。
いない、けど。って何だろう。
とりあえず、恋人はいないんだな。
でも、けど、って何だ。…もう、大事なところは心で言うんだから。
言わなきゃわからないじゃないか。
…それは俺もそうか。
心の声が聞こえることを隠してるから、こんなめんどくさいことになるんだ。
咲葉さんを責めてどうする。
…何だか、だんだん申し訳なくなってきた。全部俺が悪いんじゃないか。
勝手に心の声を聞いて、好きになって、その気になって、苛立って。
どうしようもないな、俺は。ふと見ると、咲葉さんと目が合った。
『怒ってるのかな、敦哉君』
怒ってないです。自分が嫌になってるんです。って言えないんだな。
不便だ…。もう嫌になってきた。
「咲葉さん、今日、時間作れませんか。夜でも、何時でもいいんで。」
俺の口が勝手に言った。
そして我に返って、できれば来週くらいがいいな、と思った。
「わかった。…今日の夜、仕事終わったらメールする。」
『私も言わなきゃ。ちゃんと』
思った以上に早く話が出来そうでがっかりしたが、咲葉さんの決意の声に、俺も腹をくくる。
「はい。お願いします。」
顔をあげると、もうすぐ降りる駅だった。
「咲葉さん、寝かせてあげられなくて、すみません。」
俺が言うと、咲葉さんは少し笑って言った。
「…いいよ。」
『なんかエロい言いかた』
どうしてこのタイミングで、そんなことを思うんだろ…。もう、咲葉さんは…。
顔が熱くなる。でも、そんな咲葉さんも大好きだ。
明日の電車でも、こうして笑ってくれるといいんだけど。
だから朝も、電車に乗るか迷った。でも、突然いなくなるのは咲葉さんに失礼だ。
ちゃんと直接ありがとうって言って、車通学に戻ろう。
もう考えたくない。咲葉さんを疑う自分が嫌だ。
本当のことを言えない自分も嫌いだ。もう、逃げちゃおう。
今の俺には逃げることしかできない。
「おはよう。敦哉君。」
『今日も会えて嬉しい』
顔をあげると、笑顔の咲葉さんがいた。
「おはようございます…。」
優しい心の声に面食らいながら、俺は答える。
『何だか元気ないな』
すかさず俺の表情を読み取った、咲葉さんの心の声が聞こえる。
何もかもが優しい。昨日の寂しげな咲葉さんは何だったんだ?
本当に仕事で疲れていただけだったのかな。
でも、優しくしないで、って言った声は?ごめんね、って何度も言ったのは?
混乱しながらも、俺は咲葉さんと電車に乗った。
いつものように向かい合って立つ。
やっぱり咲葉さんと目が合って、声が聞こえた。
『何となく、お別れは伝わるものなのかな』
…どういうこと?お別れって、ナニ?もうわからない…。
俺は自分も別れを言おうとしていたことすら忘れて、苛立っていた。
もういいや。全部言おう。どうせお別れなら。
「咲葉さん、恋人いますか?」
自分の冷たい声にびっくりした。そして、即、後悔した。
咲葉さんは驚いて、目を丸くしている。そして、言った。
「いないよ…。」
『いないけど…』
咲葉さんはすぐに目をそらした。
俺の中で、安心と不安がマーブルのように入り混じる。
いない、けど。って何だろう。
とりあえず、恋人はいないんだな。
でも、けど、って何だ。…もう、大事なところは心で言うんだから。
言わなきゃわからないじゃないか。
…それは俺もそうか。
心の声が聞こえることを隠してるから、こんなめんどくさいことになるんだ。
咲葉さんを責めてどうする。
…何だか、だんだん申し訳なくなってきた。全部俺が悪いんじゃないか。
勝手に心の声を聞いて、好きになって、その気になって、苛立って。
どうしようもないな、俺は。ふと見ると、咲葉さんと目が合った。
『怒ってるのかな、敦哉君』
怒ってないです。自分が嫌になってるんです。って言えないんだな。
不便だ…。もう嫌になってきた。
「咲葉さん、今日、時間作れませんか。夜でも、何時でもいいんで。」
俺の口が勝手に言った。
そして我に返って、できれば来週くらいがいいな、と思った。
「わかった。…今日の夜、仕事終わったらメールする。」
『私も言わなきゃ。ちゃんと』
思った以上に早く話が出来そうでがっかりしたが、咲葉さんの決意の声に、俺も腹をくくる。
「はい。お願いします。」
顔をあげると、もうすぐ降りる駅だった。
「咲葉さん、寝かせてあげられなくて、すみません。」
俺が言うと、咲葉さんは少し笑って言った。
「…いいよ。」
『なんかエロい言いかた』
どうしてこのタイミングで、そんなことを思うんだろ…。もう、咲葉さんは…。
顔が熱くなる。でも、そんな咲葉さんも大好きだ。
明日の電車でも、こうして笑ってくれるといいんだけど。