レインボウ☆アイズ
「お待たせー。」
全然待った気がしないうちに、咲葉さんがチャーハンの皿を持ってやってきた。
「ありがとうございます。」
「うん。お腹空いたでしょ。」
胸がいっぱいで空腹は感じないが、
「…はい。」
と言ってみる。
「いただきまーす。」
そう言って、咲葉さんは食べ始めた。
「…いただきます。」
俺も言って食べてみる。
おいしい…。咲葉さんって料理もできるんだ。…すごいな。
でもこれが最後の手料理なのかな、と思って食べる手が止まる。
「…美味しくなかった?」
俺に気づいて咲葉さんが言った。
「いえ、そんなことないです…。すみません。気になって食べられなくて。」
咲葉さんは食べながら目を見る。
『大阪のこと?』
「はい…。」
俺の気持ちは言わないと伝わらない。わかっているけど、怖くて聞けない。
すると、咲葉さんが言った。
「大阪…行こうと思ってるんだ。」
『ごめんね…』
一番聞きたくない言葉だった。
悩んでる、とか、どうしたらいいかな、とか言ってほしかった。
行くって決められたら、もう俺には止められない。
「はい…。」
そう言うのが精一杯で、俺はうつむいた。
やっぱり俺の目からは、涙が溢れてしまう。
そういえば、俺は泣き虫だったんだ。
小さい頃から、嫌な声を聞くと泣いていた。泣くとスッキリして学校に行けた。
誰も泣くのを止めなかった。髪を伸ばし始めた頃から、泣くのは我慢した。
そんなことを思いながら泣いていると、優しい手が髪に触れた。
「本当に泣き虫だなあ、君は。」
その手は、俺の頭をそのまま咲葉さんの肩まで持って行った。
咲葉さんの髪が俺の鼻に触れた。なんだかいい香りがする。
俺の頭は咲葉さんの両手に抱えられている。
こんなことをされたら、涙は止まってしまう。…いいんだろうか。
「こんなことでもないと、大阪には一生住まないだろうな、と思って。」
咲葉さんの声が、耳のすぐそばで聞こえる。
「敦哉君とは離れたくないけど、新しい世界にも行ってみたいんだよね。」
咲葉さんはそう言いながら、俺の髪に頬を寄せる。
「ごめんね…。泣かせちゃって。」
咲葉さんが触っている俺の髪が、くすぐったい。
体はすごく幸せなのに、心は寂しい…いや、寂しくはない。
離れたくないって言ってくれて、ごめんねって言ってくれて、抱きしめてくれてる。
「…俺は幸せです。咲葉さんに会えて、抱きしめてもらって。
泣き虫で情けない俺なのに…。笑顔で見送れなくて、ごめんなさい。」
そう言ってまた涙は出るけど、寂しくはない。
咲葉さんがいなくなるのは怖いけど、咲葉さんの腕の中にいると、なんとかなる気がする。
不思議だ…。これが充電ってやつなのかな。
咲葉さんの肩に顔を埋めながら考えていると、咲葉さんが言った。
「本当に君は可愛いよ…。食べていい?」
ん…?今、食べていいって言った?と思っていると、咲葉さんが俺の耳を噛んだ。
ビクッとして思わず顔をあげて、咲葉さんを見る。
「だめだったかー。」
『我慢できなかった』
無邪気に笑っている。いや…笑われている気がする。
俺は咲葉さんの肩に額をつけて、言った。
「もう一度、お願いします。」
額をつけた肩が揺れている。咲葉さんは笑っていた。
「君は面白いなー。…じゃ、いただきまーす。」
そう言って咲葉さんは、また俺の耳を噛んだ。
…くすぐったい…。でも、我慢しなきゃ…。
あー…でも変な気持ちになってきた…。
咲葉さんの吐息が耳から聞こえて、限界を突破した。
「すみません、もう無理です…。」
言いながら俺が顔を上げると、
「これからなのになー。」
やっぱり咲葉さんは笑って言った。
『でも、よく我慢できるなあー』
いや、だから我慢できないって言ってるのに…。
咲葉さんってよくわからない…。俺は耳を押さえながら言った。
「なんでこんなことするんですか…?」
「君が可愛いからだよ。」
『さっき言った気がするけど』
「好きとは違うんでしょうか…。」
「好きだよ?」
「じゃ、なんで付き合うのは、考えてるんですか…?」
なんか俺、女々しいなあ。待つって言ったのに。
でも、もう言っちゃったし。大阪行っちゃうから、いいか…。
「…うーん。」
咲葉さんは目をそらして考えている。
俺は目をそらせないように、近づいて言った。
「咲葉さんの本当の気持ちが、知りたいです。」
自分の行動力に自分で驚きながら、咲葉さんの言葉を待った。
「わかった。」
諦めたように、咲葉さんは俺の目を見て言った。
『大好きだよ』
「食べちゃいたいくらい、好き。」
嬉しくて、俺が目をそらしてしまう。
「でも敦哉君、初めてでしょ?」
はじめて?まあ…色々初めてですけど…。
「だから…手をつないで、キスして、触って、って、ちゃんと順番に
ゆっくりしてあげたいんだけど、私の場合、一気に最後までダッシュしちゃうんだよね。」
『基本エロいんで』
「それじゃちょっと夢がなくて、可哀想かなと思ってさ…。」
咲葉さんはそう言って、少し笑って目を伏せた。
言ってることはすごいけど、その姿は恥ずかしそうに見えて、可愛い。
そう思ったら、俺は咲葉さんを抱きしめていた。
「俺、夢なんて見れてないんで、大丈夫です。
こんな俺だから、エッチなことなんて一生できないって思ってました。
…だから、何でもいいんです。好きにしてください…。」
言ってみて、やっぱり女々しいな、と思う。好きにしてくださいって…。
自分の言葉に引いていると、俺の腕の中で咲葉さんは言った。
「そそるセリフ…。じゃ、お言葉に甘えて、好きにするね。」
そう言って、咲葉さんは俺の首にキスをした。
顔は熱いのに、ゾクッと冷めたものが体を走る。…でも、悪くはない。
そのまま咲葉さんは腕を伸ばして、俺の背中を指でなぞる。
初めての快感に襲われ、俺は動けないのに、心臓は激しく動く。
咲葉さんの唇が、キスをしながら俺の頬までのぼってきた。
ドキドキしながら唇を待っていて、そろそろ来るかと思っていたら、
咲葉さんは俺の鼻を噛んだ。
えー、と思って、閉じていた目を開いて、咲葉さんの顔を見ると
『したいなら自分からして』
と聞こえた。
そっか、と納得して、俺は咲葉さんの唇にキスをする。
咲葉さんの唇が柔らかくて、溶けてしまいそうだ。
もういつ死んでもいいな、と思っていると、咲葉さんの唇が開いた。
咲葉さんの舌が俺の歯をこじ開けたので、思わず目を見開く。
薄目を開けていた咲葉さんと目が合った。
『足りない』
そうなんだ…。俺は目を閉じて、恐る恐る舌を伸ばす。
咲葉さんの舌に触れたので、その先まで舌でまさぐってみる。
もう俺はほとんど溶けている気がする。
でも…咲葉さんはどうかな。まだ足りないかな。
薄目を開けて咲葉さんを見ると、目を閉じているのにとろんとしている。
その顔を見たら、溶けた俺の体に何かが沸いてきて、俺の舌が止まらない。
少し息苦しくなって一瞬離れて、咲葉さんの顔を見ると、
またキスしたくなり、唇を合わせる。…やっぱり止まらなかった。
また一瞬離れた隙に、咲葉さんが言った。
「敦哉…もう足りました…。」
顔を見るとやっぱりとろんとした目。
『なかなかやるなあ…』
心の声に俺は笑って、また咲葉さんを抱きしめた。
全然待った気がしないうちに、咲葉さんがチャーハンの皿を持ってやってきた。
「ありがとうございます。」
「うん。お腹空いたでしょ。」
胸がいっぱいで空腹は感じないが、
「…はい。」
と言ってみる。
「いただきまーす。」
そう言って、咲葉さんは食べ始めた。
「…いただきます。」
俺も言って食べてみる。
おいしい…。咲葉さんって料理もできるんだ。…すごいな。
でもこれが最後の手料理なのかな、と思って食べる手が止まる。
「…美味しくなかった?」
俺に気づいて咲葉さんが言った。
「いえ、そんなことないです…。すみません。気になって食べられなくて。」
咲葉さんは食べながら目を見る。
『大阪のこと?』
「はい…。」
俺の気持ちは言わないと伝わらない。わかっているけど、怖くて聞けない。
すると、咲葉さんが言った。
「大阪…行こうと思ってるんだ。」
『ごめんね…』
一番聞きたくない言葉だった。
悩んでる、とか、どうしたらいいかな、とか言ってほしかった。
行くって決められたら、もう俺には止められない。
「はい…。」
そう言うのが精一杯で、俺はうつむいた。
やっぱり俺の目からは、涙が溢れてしまう。
そういえば、俺は泣き虫だったんだ。
小さい頃から、嫌な声を聞くと泣いていた。泣くとスッキリして学校に行けた。
誰も泣くのを止めなかった。髪を伸ばし始めた頃から、泣くのは我慢した。
そんなことを思いながら泣いていると、優しい手が髪に触れた。
「本当に泣き虫だなあ、君は。」
その手は、俺の頭をそのまま咲葉さんの肩まで持って行った。
咲葉さんの髪が俺の鼻に触れた。なんだかいい香りがする。
俺の頭は咲葉さんの両手に抱えられている。
こんなことをされたら、涙は止まってしまう。…いいんだろうか。
「こんなことでもないと、大阪には一生住まないだろうな、と思って。」
咲葉さんの声が、耳のすぐそばで聞こえる。
「敦哉君とは離れたくないけど、新しい世界にも行ってみたいんだよね。」
咲葉さんはそう言いながら、俺の髪に頬を寄せる。
「ごめんね…。泣かせちゃって。」
咲葉さんが触っている俺の髪が、くすぐったい。
体はすごく幸せなのに、心は寂しい…いや、寂しくはない。
離れたくないって言ってくれて、ごめんねって言ってくれて、抱きしめてくれてる。
「…俺は幸せです。咲葉さんに会えて、抱きしめてもらって。
泣き虫で情けない俺なのに…。笑顔で見送れなくて、ごめんなさい。」
そう言ってまた涙は出るけど、寂しくはない。
咲葉さんがいなくなるのは怖いけど、咲葉さんの腕の中にいると、なんとかなる気がする。
不思議だ…。これが充電ってやつなのかな。
咲葉さんの肩に顔を埋めながら考えていると、咲葉さんが言った。
「本当に君は可愛いよ…。食べていい?」
ん…?今、食べていいって言った?と思っていると、咲葉さんが俺の耳を噛んだ。
ビクッとして思わず顔をあげて、咲葉さんを見る。
「だめだったかー。」
『我慢できなかった』
無邪気に笑っている。いや…笑われている気がする。
俺は咲葉さんの肩に額をつけて、言った。
「もう一度、お願いします。」
額をつけた肩が揺れている。咲葉さんは笑っていた。
「君は面白いなー。…じゃ、いただきまーす。」
そう言って咲葉さんは、また俺の耳を噛んだ。
…くすぐったい…。でも、我慢しなきゃ…。
あー…でも変な気持ちになってきた…。
咲葉さんの吐息が耳から聞こえて、限界を突破した。
「すみません、もう無理です…。」
言いながら俺が顔を上げると、
「これからなのになー。」
やっぱり咲葉さんは笑って言った。
『でも、よく我慢できるなあー』
いや、だから我慢できないって言ってるのに…。
咲葉さんってよくわからない…。俺は耳を押さえながら言った。
「なんでこんなことするんですか…?」
「君が可愛いからだよ。」
『さっき言った気がするけど』
「好きとは違うんでしょうか…。」
「好きだよ?」
「じゃ、なんで付き合うのは、考えてるんですか…?」
なんか俺、女々しいなあ。待つって言ったのに。
でも、もう言っちゃったし。大阪行っちゃうから、いいか…。
「…うーん。」
咲葉さんは目をそらして考えている。
俺は目をそらせないように、近づいて言った。
「咲葉さんの本当の気持ちが、知りたいです。」
自分の行動力に自分で驚きながら、咲葉さんの言葉を待った。
「わかった。」
諦めたように、咲葉さんは俺の目を見て言った。
『大好きだよ』
「食べちゃいたいくらい、好き。」
嬉しくて、俺が目をそらしてしまう。
「でも敦哉君、初めてでしょ?」
はじめて?まあ…色々初めてですけど…。
「だから…手をつないで、キスして、触って、って、ちゃんと順番に
ゆっくりしてあげたいんだけど、私の場合、一気に最後までダッシュしちゃうんだよね。」
『基本エロいんで』
「それじゃちょっと夢がなくて、可哀想かなと思ってさ…。」
咲葉さんはそう言って、少し笑って目を伏せた。
言ってることはすごいけど、その姿は恥ずかしそうに見えて、可愛い。
そう思ったら、俺は咲葉さんを抱きしめていた。
「俺、夢なんて見れてないんで、大丈夫です。
こんな俺だから、エッチなことなんて一生できないって思ってました。
…だから、何でもいいんです。好きにしてください…。」
言ってみて、やっぱり女々しいな、と思う。好きにしてくださいって…。
自分の言葉に引いていると、俺の腕の中で咲葉さんは言った。
「そそるセリフ…。じゃ、お言葉に甘えて、好きにするね。」
そう言って、咲葉さんは俺の首にキスをした。
顔は熱いのに、ゾクッと冷めたものが体を走る。…でも、悪くはない。
そのまま咲葉さんは腕を伸ばして、俺の背中を指でなぞる。
初めての快感に襲われ、俺は動けないのに、心臓は激しく動く。
咲葉さんの唇が、キスをしながら俺の頬までのぼってきた。
ドキドキしながら唇を待っていて、そろそろ来るかと思っていたら、
咲葉さんは俺の鼻を噛んだ。
えー、と思って、閉じていた目を開いて、咲葉さんの顔を見ると
『したいなら自分からして』
と聞こえた。
そっか、と納得して、俺は咲葉さんの唇にキスをする。
咲葉さんの唇が柔らかくて、溶けてしまいそうだ。
もういつ死んでもいいな、と思っていると、咲葉さんの唇が開いた。
咲葉さんの舌が俺の歯をこじ開けたので、思わず目を見開く。
薄目を開けていた咲葉さんと目が合った。
『足りない』
そうなんだ…。俺は目を閉じて、恐る恐る舌を伸ばす。
咲葉さんの舌に触れたので、その先まで舌でまさぐってみる。
もう俺はほとんど溶けている気がする。
でも…咲葉さんはどうかな。まだ足りないかな。
薄目を開けて咲葉さんを見ると、目を閉じているのにとろんとしている。
その顔を見たら、溶けた俺の体に何かが沸いてきて、俺の舌が止まらない。
少し息苦しくなって一瞬離れて、咲葉さんの顔を見ると、
またキスしたくなり、唇を合わせる。…やっぱり止まらなかった。
また一瞬離れた隙に、咲葉さんが言った。
「敦哉…もう足りました…。」
顔を見るとやっぱりとろんとした目。
『なかなかやるなあ…』
心の声に俺は笑って、また咲葉さんを抱きしめた。