レインボウ☆アイズ
夜
保健室で、祐子さんに相談はしなかった。
何故なら、もう俺の気持ちは決まっていたから。
10時になると、俺は家を出た。
修も使用人もみんな帰った後なので、自分で鍵をかける。
修に、咲葉さんの家に泊まるから夜に家を出る、と言ったら、
「戸締りをお願いいたします」と言って、鍵を渡された。
親が不在だから、何か言われるかと構えていたけど、あっけなかった。
駅まで送るとも言わなかったし。…俺って、実はおぼっちゃんじゃないのかもしれない。
そんなことを思いながら歩いていると、駅に着いた。
夜の電車は混んでいるって咲葉さんは言っていたけど、全然そんなことはなかった。
一番後ろの車両に乗ったせいだろうか。朝よりずっと空いているから気が楽だった。
いつも咲葉さんが立っているドアに寄りかかって、外を見る。
…夜の景色って綺麗なんだな。咲葉さんと見たかった。
あ、帰りは咲葉さんと見れるんだ。楽しみだな。
…咲葉さんが怒らずに、一緒に帰ってくれればだけど…。
迎えにいくって言ったら、来なくていいって返されそうだから、何も言わずにここまで来た。
…すごく怒っちゃって、泊まる約束もなくなったらどうしよう…。
なんだか恐ろしくなっていると、駅に着いた。
時計を見ると10時40分。思った以上に早く着いてしまった…。
どうしよう。この駅の改札の前にはベンチがない。…どうしよう…。
途方に暮れていると、人がぶつかってきた。
驚いて見ると、
『邪魔だ』
目が合って心の声が聞こえた。
確かにこんなところにぼけっとしてたら、邪魔だよな…。
柱の影に移動する。11時まであと20分。ここで待つしかないか。
柱に寄りかかって時計を眺める。…いくら待っても進まない。
気が遠くなりそうだと思っていると、携帯が鳴った。…咲葉さんからだ。
「も、もしもし…。」
「敦哉?ごめんね、遅くに電話してー。寝てた?」
電話の向こうはガヤガヤと騒がしいけど、
咲葉さんのご機嫌な声を聞いてなんだか安心する。
「ううん…寝てないです…あの…」
駅にいることを言おうとするが、咲葉さんに遮られてしまった。
「じゃ、よかった。…あのね、高校生の彼氏ができたって言ってるのに
みんな信じてくれないから、証言して。」
え?と思っていると、
「…あ、もしもしー。こんばんはー。」
咲葉さんじゃない女の人の声がした。
「こ、こんばんは…。」
「ごめんなさいねえ、突然。…で、本当に高校生なの?」
謝っている割にあっけらかんと聞くので、驚きながら答える。
「あ、はい…。」
「へー…。ほんとに付き合ってるの?脅されてない?」
電話の向こうで、脅してないし、と言う咲葉さんの声が聞こえる。
「本当に、付き合ってます…。」
そう言う俺の横を、体格がいい酔っ払った人たちが通った。
でかい体にでかい声だ、と驚く。
その声は、電話の向こうにも届いたようだった。
「あれ?彼氏くん、どこにいるの?外?」
「あ、はい…。」
電話の向こうで、ちょっと貸して、と咲葉さんが言った。
「敦哉、外にいるの?」
電話に出た咲葉さんは、心配した声で言う。
「はい…。えっと…」
「まさか…駅で待ってる?」
咲葉さんはすごいなあ、と心から思う。
電話で顔も見えないし、心の声も聞こえないはずなのに。
「はい…。」
「もー…。まだ帰れないよ?」
「ごめんなさい…。」
やっぱり怒られた…。
へこんでいると、電話の向こうで、来ればいいじゃん、と言ってる声がする。
「…未成年だからダメー。…じゃ、今から帰るから…」
話している咲葉さんの声が遠くなったと思ったら、また知らない女の人の声がした。
「今どこ駅にいるの?おいでよ。駅まで迎えに行くし。」
遠くで、ダメだってばー、と言う咲葉さんの声がする。
どうせ怒られるんだからいいか、と思い、俺は正直に言うことにした。
「えっと…。もう近くの駅にいるんです。」
「え!そうなんだ!迎えに行くねー。」
そう言って電話は切れてしまった。
何故なら、もう俺の気持ちは決まっていたから。
10時になると、俺は家を出た。
修も使用人もみんな帰った後なので、自分で鍵をかける。
修に、咲葉さんの家に泊まるから夜に家を出る、と言ったら、
「戸締りをお願いいたします」と言って、鍵を渡された。
親が不在だから、何か言われるかと構えていたけど、あっけなかった。
駅まで送るとも言わなかったし。…俺って、実はおぼっちゃんじゃないのかもしれない。
そんなことを思いながら歩いていると、駅に着いた。
夜の電車は混んでいるって咲葉さんは言っていたけど、全然そんなことはなかった。
一番後ろの車両に乗ったせいだろうか。朝よりずっと空いているから気が楽だった。
いつも咲葉さんが立っているドアに寄りかかって、外を見る。
…夜の景色って綺麗なんだな。咲葉さんと見たかった。
あ、帰りは咲葉さんと見れるんだ。楽しみだな。
…咲葉さんが怒らずに、一緒に帰ってくれればだけど…。
迎えにいくって言ったら、来なくていいって返されそうだから、何も言わずにここまで来た。
…すごく怒っちゃって、泊まる約束もなくなったらどうしよう…。
なんだか恐ろしくなっていると、駅に着いた。
時計を見ると10時40分。思った以上に早く着いてしまった…。
どうしよう。この駅の改札の前にはベンチがない。…どうしよう…。
途方に暮れていると、人がぶつかってきた。
驚いて見ると、
『邪魔だ』
目が合って心の声が聞こえた。
確かにこんなところにぼけっとしてたら、邪魔だよな…。
柱の影に移動する。11時まであと20分。ここで待つしかないか。
柱に寄りかかって時計を眺める。…いくら待っても進まない。
気が遠くなりそうだと思っていると、携帯が鳴った。…咲葉さんからだ。
「も、もしもし…。」
「敦哉?ごめんね、遅くに電話してー。寝てた?」
電話の向こうはガヤガヤと騒がしいけど、
咲葉さんのご機嫌な声を聞いてなんだか安心する。
「ううん…寝てないです…あの…」
駅にいることを言おうとするが、咲葉さんに遮られてしまった。
「じゃ、よかった。…あのね、高校生の彼氏ができたって言ってるのに
みんな信じてくれないから、証言して。」
え?と思っていると、
「…あ、もしもしー。こんばんはー。」
咲葉さんじゃない女の人の声がした。
「こ、こんばんは…。」
「ごめんなさいねえ、突然。…で、本当に高校生なの?」
謝っている割にあっけらかんと聞くので、驚きながら答える。
「あ、はい…。」
「へー…。ほんとに付き合ってるの?脅されてない?」
電話の向こうで、脅してないし、と言う咲葉さんの声が聞こえる。
「本当に、付き合ってます…。」
そう言う俺の横を、体格がいい酔っ払った人たちが通った。
でかい体にでかい声だ、と驚く。
その声は、電話の向こうにも届いたようだった。
「あれ?彼氏くん、どこにいるの?外?」
「あ、はい…。」
電話の向こうで、ちょっと貸して、と咲葉さんが言った。
「敦哉、外にいるの?」
電話に出た咲葉さんは、心配した声で言う。
「はい…。えっと…」
「まさか…駅で待ってる?」
咲葉さんはすごいなあ、と心から思う。
電話で顔も見えないし、心の声も聞こえないはずなのに。
「はい…。」
「もー…。まだ帰れないよ?」
「ごめんなさい…。」
やっぱり怒られた…。
へこんでいると、電話の向こうで、来ればいいじゃん、と言ってる声がする。
「…未成年だからダメー。…じゃ、今から帰るから…」
話している咲葉さんの声が遠くなったと思ったら、また知らない女の人の声がした。
「今どこ駅にいるの?おいでよ。駅まで迎えに行くし。」
遠くで、ダメだってばー、と言う咲葉さんの声がする。
どうせ怒られるんだからいいか、と思い、俺は正直に言うことにした。
「えっと…。もう近くの駅にいるんです。」
「え!そうなんだ!迎えに行くねー。」
そう言って電話は切れてしまった。