レインボウ☆アイズ

一週間後

そして、一週間後の休日、俺は当たり前のように咲葉さんの家にいた。
「あー、もう、どうしようかなー…。」
咲葉さんはぬいぐるみを抱いて、パソコンの求人情報を見ている。
「もういいじゃん。働かないで、結婚しようよ。」
俺は後ろから抱きついて言った。
「だから、それは敦哉が大学を卒業してからねって言ったでしょ…。」
その言葉をかき消すかのように、俺は咲葉さんの耳を噛んで、体をまさぐる。
「もうー、昨日から何回してるのよー…。」
「いいじゃん。明日から有休なんでしょ?
 俺一人で電車に乗るんだよ。フル充電しておかないと…。」
「まだ足りないんだー…。敦哉のバッテリー、壊れてるよ。」
「…うまいこと言うね。」
感心して俺は唇を離してしまう。
「うーん…。」
俺の手は止まらずに体を撫でているのに、咲葉さんはまだパソコンを見つめている。
このまましても『仕事どうしよう…』という心の声で、俺は萎えるな。
しかたがないので、一緒に考えることにした。
「もうさ、お金で選ぶのはやめて、好きなことすればいいじゃん。
 足りなくなったら、なんとかするから。」
咲葉さんのはだけた服を直しながら、俺は言った。
「うーん…。好きなこと…。」
咲葉さんはパソコンを見るのをやめて、俺にもたれかかる。
「酒を飲んでゴロゴロしてたい…。けど、それは人としてなあ…。」
「他には?」
咲葉さんらしい、と思いながら、笑って俺は聞く。
「敦哉といちゃいちゃ…。」
やっぱり結婚して、一緒に暮らそうよって言おうとしたら
「でも、毎日ずっとしてたら飽きるよなあ…。」
咲葉さんが言った。
「そっか…。」
我ながらがっかりした声を出してしまう。
「お金を稼がなくてもいいって言われると、
 たいしてやりたいことなんて無いんだなー…。」
俺の気持ちには全く気づかずに、咲葉さんは言う。
「敦哉は大学卒業したら、何するの?」
振り向き、俺の顔を覗き込んで、咲葉さんは聞いた。
「…大学行きながら考えるつもりだけど…。
 同じ能力を持つ人に会ってみたい、って漠然と思ってる。」
変なこと言ってるかな、と怖々言ったが
「なるほど。絶対いるよね。」
咲葉さんは真剣な顔で答えた。
やっぱり咲葉さんはすごいな。
「咲葉さんがいてくれれば、なんでもできる気がする。
 ずっとそばにいてほしい。」
俺は咲葉さんを抱きしめて言った。
「うん…。私もお手伝いしたいな…。そのためには何をしたらいいんだろうか。」
一緒に暮らしたいけど、きっとまた呆れられるので言うのはやめる。
「色んな人に会う仕事をしようかな…。」
「でも、咲葉さんが会っても、心の声が聞こえないでしょ。」
「そっか。じゃ、何すればいいかな…?」
「何度も言うようだけど…そばにいてくれればいいから。」
だから結婚…と言いそうになってしまうが、なんとか言わずに止めた。
「…やっぱり学校の事務の仕事、やればよかったかなー。」
「でも、高校も今年で卒業だしね。」
「じゃ、敦哉の大学の近くで働こうかな。」
「…大学で何か募集してないか、聞いてみるね。」
「うん。ありがとう。」
そう言って咲葉さんは俺にキスした。
「じゃ、充電させてもらっていいでしょうか。」
「うーん…。安心したら、お腹がすいた。ケーキ食べたい。」
「はい。承知いたしました。」
俺は立ち上がって、キッチンに向かい、咲葉さんに教わったとおりお茶を入れ始めた。
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