失恋ゲーム。
生徒会室のように、紅茶の匂いがなければお菓子の匂いもない。だけど、この匂いもどこかで匂ったような香りだった。
「おやおや、どうしたんだい?」
そう、椅子から立ち上がる音がして、皆が私の前から退いた。
「え……っ。」
息を呑む。あぁ、嫌な“夢”がまた始まる。
「と、うま君……結愛が来るとは聞いてなかったんだけど……。」
「あ、すみません。結愛ちゃんにも理事長を紹介しようと思って。」
慌てて言う斗真。何だか意外。
「あれ、理事長なんで“結愛”って言ってるの……?いつもは名字じゃん。」
そう千夏に言われてハッとする理事長と、
「結愛……?どうした……?」
固まっている私を心配する瑠樹。
「な、んで……いるのよ……。なんで……っ、」
言葉を選べない。
「お父さん……っ、なんで、いるの!?」
まだ、この人を“お父さん”と言える喜びがある。
だけど、今はそんな場合じゃない。この人はいつから理事長?このゲームに参加するときも、私を知っていたの?
質問したいことが沢山あって、混乱する。
「お父、さん……?」