失恋ゲーム。

八尋達も、当時から美歌の事は知っていたけど“男の子が怖い”という理由で八尋達とはあまり会わなかったし、喋らなかった。

「俺は、怖くないの?」

「斗真は、なんだか落ち着くの。優しいしね。」

そう笑って言った美歌。その言葉に浮かれていた俺は美歌の本性に気づかなかった。

✧*

中学1年生。

「は……、美歌が俺の婚約者?」

あまりにも、突然で。あまりにも衝撃的だった。

父親の声は、何時もより少しトーンが高くて嬉しそう。

「あぁ。だけど、結婚するのは20歳を越えてから。それまでは自由に恋愛しなさい。」

当時、俺は同じ中学校の、美歌と正反対の子に恋をしていた。初めて会った頃の小さな恋心を忘れて。

父親の言葉を聞いて、ホッとする。美歌も好きな人くらい居るだろうしなんだか安心した。

だけど、安心したのも束の間だった。

───────
───

「あの、好き……なんだけど。付き合ってください。」

心臓が痛い程動いていて、手にじんわり汗をかいていた。頬や背中だけじゃなくて、体全身が暑いのをよく覚えている。

「っ、うん!よろしく……。」

彼女も、嬉しそうに涙を浮かべてはにかんでいた。

美歌が、婚約者と聞かされた1ヶ月後くらい。俺は好きな女の子に告白して成功していた。



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