失恋ゲーム。
八尋達も、当時から美歌の事は知っていたけど“男の子が怖い”という理由で八尋達とはあまり会わなかったし、喋らなかった。
「俺は、怖くないの?」
「斗真は、なんだか落ち着くの。優しいしね。」
そう笑って言った美歌。その言葉に浮かれていた俺は美歌の本性に気づかなかった。
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中学1年生。
「は……、美歌が俺の婚約者?」
あまりにも、突然で。あまりにも衝撃的だった。
父親の声は、何時もより少しトーンが高くて嬉しそう。
「あぁ。だけど、結婚するのは20歳を越えてから。それまでは自由に恋愛しなさい。」
当時、俺は同じ中学校の、美歌と正反対の子に恋をしていた。初めて会った頃の小さな恋心を忘れて。
父親の言葉を聞いて、ホッとする。美歌も好きな人くらい居るだろうしなんだか安心した。
だけど、安心したのも束の間だった。
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「あの、好き……なんだけど。付き合ってください。」
心臓が痛い程動いていて、手にじんわり汗をかいていた。頬や背中だけじゃなくて、体全身が暑いのをよく覚えている。
「っ、うん!よろしく……。」
彼女も、嬉しそうに涙を浮かべてはにかんでいた。
美歌が、婚約者と聞かされた1ヶ月後くらい。俺は好きな女の子に告白して成功していた。