フルート吹きの魔法使い
「そういえば、聞いたよ。次の魔法長はルリなんだって?」
「・・・そうなんですが・・・。こんな役立たずな女が魔法長なんて務まるんでしょうか?」
「ははは、大丈夫だよルリ。攻撃魔法が使えるから優秀だとは限らない。大事なのは人の役に立つ魔法を使えるかどうか、だ。ルリはその魔法を使える。そしてルリにしか使えない魔法を持っている。それだけでも魔法長に相応しい人間だよ」
「そう、言われても・・・。やっぱり自信がなくて」
るりは不安そうな表情を浮べ、モールを見る。
そんなるりに、モールは安心させるように優しく語りかけた。
「なるようにしかならんさ。でも、ルリは1人じゃない。ルリの周りには助けてくれる仲間がいる。魔法長だからといって1人で何でも抱える必要なんてないんだ。困ったら皆を頼って、助け合っていけばいい。わしはそれが出来なかった。何でも1人でやってきてしまった。下にいる魔法使いの者達と協力する事をしなかったんだ。だからフィランドールのような者が生まれたのかもしれない。あのような邪念を抱く前に助ける事が出来たならば、このような事はなかったかもしれないね」
「モールさん・・・」
「何でも話し合える仲間がいるというのは素晴らしい事だよ。これからも大事にしなさい、彼らを」
そう言うと、るりの頭を軽く撫でた。
しわしわの、でも暖かい手。
そこから勇気を貰えた様な気がする。
「・・・はい。私なりに頑張ってみます。皆に迷惑をかけてしまうかも知れないけれど」
「そうやって人間は成長していく。頑張りな、ルリ」