フルート吹きの魔法使い
なぜ、川に来たかというと、「練習曲3番」が水を出す魔法だったからだ。
水のある場所でならいくら吹いても問題ないだろう、ってことでモールに教えられて川に来たのだ。
そんなに大きくはない川。
だが水はとても澄んでいて綺麗だ。
そして、さわさわさわ、と水の流れる音が心地よい。
「ようやく思いっきり吹けるのね!」
るりはとびっきりの明るい声でそう叫ぶ。
とは言っても3番だけなのだけれど。
それでも吹き足りないるりには嬉しい事だった。
るりは早速フルートを構えると、3番を吹き始める。
練習曲といっても、ちゃんとした曲。
その曲はまさに水が流れるような早いパッセージの続く曲だ。
音に合わせて川へ何もない空間から水が流れ始める。
るりは一心不乱に、何回も何回も同じ曲を吹き続けた。