フルート吹きの魔法使い

るりはまだ、「恋」がどういうものなのか知らない。
そのせいか、大学でのレッスンでもよく言われていた。

"あなたは恋をしたら、もっと艶のある音が出ますよ"と。

るりはフルートの技術は群を抜いていたが、表現力が少し足りなかった。
それはるり自身も悩んでいた。
プロになるためには、技術も音の表現も全て出来ないといけないから。

悩むるりに先生は、その足りない部分「恋」をしていないからだと言う。
「恋」をして経験を積む事で音に更に磨きがかかる、と。




「恋・・・かあ・・」

ぶくぶくぶく、とお湯を吹く。

どちらかを好きになったのなら、私の音は変わるのかな。
その前に、好きになれるのかな・・・。

色々考えていくうちに、るりはのぼせてしまった。


< 81 / 270 >

この作品をシェア

pagetop