ヤンキー?なにそれ、美味しいの?
男の子の手が頬に触れそうになったとき、
「…いっってえ!なんだよてめえ!!」
突然でてきた人影に、その手捻りあげられた男の子は悲鳴をあげた。
「…てめえらこそ、なんだよ」
そう呟いたのは、紛れもなく安達くん。
どこから現れたのか分からないけど、その肩は縦に揺れていて、呼吸が浅いことだけは分かった。
低く呟かれた声はとても小さかったけど、周りの空気は凍ったように冷たくなる。
「…あ、安達…っ。呼ぶ前から来るなんて。やっぱこいつがお前の女だって噂、本当だったんだな」
不思議なことを言う男の子。
「は?」
「とぼけんな!!」
勢いよく殴りかかってきた別の男の子の腕を避けるついでに、もともと捻り上げていた男の腕を引き、壁に叩きつける。
そしてそのまま、殴りかかってきた男のみぞおちに一発入れ、
その様子を呆然と眺めるもう1人に冷たい視線を向けた。
「お前は?」
「いや、俺はっ、別に」
「ふーん?」
言いながら、ごつりと鈍い音が響き、その男の子は地面に倒れた。
「…っち、許さねえ…」
そんなつぶやきを残して3人は足を引きずりながら校舎裏を後にした。