ヤンキー?なにそれ、美味しいの?

#9 姫と狼、本来の生き方

+゚*。:゚+.゚*。:゚+.゚*。:゚+.゚*。:゚+.゚*。:゚+

Tシャツの件があってから、目立つようなことは無くなったけど、やっぱり冷たい空気の中。

変わらず、屋上へと足を向ける苺花。


扉を開く前に、ギュッと拳を握りしめ、覚悟を決めたように笑顔を作る。


「安達くんっ!やっほー!」


扉を開けてくれて、いつもならその勢いで抱きしめてくれる安達くん。

だけど、今日は、不機嫌そうに、苺花から距離をとるようにフェンスへと歩く。


「安達くん?どうしたの?」

「…別に」


過去の安達くんを思い出すような冷ややかな対応に、近頃心を蝕まれていた苺花は、顔を曇らせる。


でも、苺花、安達くんを大切にするって決めたの。

安達くんがいたら、苺花大丈夫だもん。


「もーっ、なんでそんな反応するのー!酷いなあ!!」


あくまで明るく、いつも通りの苺花で。

そう言って、安達くんに抱きつこうと近寄ると、安達くんは、するっと身を翻し、冷たい視線を放った。


「…やっぱ、お前だりぃわ。もう来んな」


そんな言葉が聞こえたのは、冷たい視線を感じてから一瞬のことで、苺花は足を止めて、安達くんを見つめる。


「来んなって、ええ?どうしちゃったの?酷いよ!」


ドスッと殴られたような衝撃の中、引き攣る笑顔で、

明るく、明るく、取り繕った明るさで言うけど、安達くんの表情は変わらない。

< 157 / 215 >

この作品をシェア

pagetop