ヤンキー?なにそれ、美味しいの?
「苺花のためなの、安達…分かって?」
数週間前、突然、屋上へ来て、俺に向かって真っ直ぐに頭を下げた早柿伊織の姿を思い出す。
明らかに、苺花に元気がないのは分かっていた。
俺のせいで、あいつが傷付けられている。
その事実を聞かされた俺は、湧き上がってくる怒りを噛み殺すように強く拳を握る。
「…別れる」
「え、」
小さく呟いた俺の言葉に、早柿は焦ったように頭を上げた。
「別れるから。すぐに噂広めろよ」
ぶつけられない怒りを含む、強い口調でそう言うと、早柿は少し怯えるように肩を揺らした。
「ま、待ってよ、そこまでしなくたっていい、苺花は本当に安達のこと好きなのよ」
焦ったように、そう言う早柿に俺は渇いた笑いで返した。
「んな中途半端なこと出来るかよ。
付き合ってる限り、あいつは屋上にきっと来る。隠せねーだろ。」
「でも」
「お前もそう思うからここに来たんだろ、こんなことで噂立てて、あいつの人生壊したくねーの」
黙り込んだ早柿に、俺は背を向けた。
「苺花のこと、頼むよ」
「…っ、ごめん、安達。」
苦しそうな声で、そんな言葉を残して早柿は去っていった。
そのあとすぐ、屋上へ現れた苺花に、俺は酷いことを言い、宣言通りあいつを遠ざけたのだ。