ヤンキー?なにそれ、美味しいの?
早柿は、きっと頼んだ通りに動いてくれた。
ほんの数日経てば、
俺と離れたという噂が広がり、苺花の周りには再び人が溢れた。
たくさんの人に囲まれて楽しそうに笑うあいつを何度も見つけて、
その度にグッと詰まる心に気付かないふりをした。
屋上にいると、余計な声も耳に入る。
「苺花ちゃん、俺と付き合ってくれない?」
「俺、桜井さんがずっと好きでした!」
屋上前の廊下で繰り広げる告白の言葉。
何度聞いたか分からないような頻度で告られるあいつ。
その度に痛む胸を隠して、俺はため息をつく。
以前、告白される苺花に嫉妬のような感情をぶつけたこともあった。
けど今は、それすら許されない。
目に入りやすい、真っ赤な色のクラスTシャツを着た俺らのクラスは、練習時間が終わってもなかなか教室に入ることはなく、
楽しそうに、大人数で話していた。
クラスの雰囲気も良好なようで、その様子もまた俺の心を締め付ける、
「…やっぱり、俺に普通は許されない」
嘲笑うかのように、小さな笑いを吐き捨て、俺は、校舎を後にした。
そして、行くあてもなく、ふらふらと夜の街へと繰り出した。