ヤンキー?なにそれ、美味しいの?
「…」
目の前に立つ男の子の顔を見ると、酷く脅えた表情で、苺花から手を離して後ずさる。
「あ、安達透……」
苺花は、振り返ることは出来ず、ただその場に固まった。
「行けよ、邪魔なんだよ」
冷たい声が後ろから響き、男の子はその場から逃げるように背を向けた。
静まり返った空間と、後ろに感じる安達くんの存在。
居心地の悪い空白が数秒流れた後、安達くんの足跡が近付いた。
「お前も戻れよ」
久しぶりに聞いた安達くんの声。
少しも苺花を見ることなく、通りすがりにそう呟いて階段を登っていく。
重い扉を軽々と押し明け、
屋上へとその背中が消えようとした瞬間。
それまで固まったかのように動かなかった苺花の足は、安達くんを追いかけるように駆け出した。