ヤンキー?なにそれ、美味しいの?
一転、応援のない空間の中で俺は走る。
あー、何してんだろ俺、別に本気で走る必要ねーよなただの代理だし。
そんな考えが一瞬過ぎる中、聞きなれた声が俺の耳に届いた。
「安達くーーーん!!!!!」
立ったひとつ、だけど大きな一声。
俺はバトンを握り直し、強く踏切った。
「安達抜けー!!!!」
クラスのテントの前を通った時、怪我をしたクラスメートの男子がそう叫んで手を振る。
それに驚きながら、俺はさらに気合を入れて、全力で走り出した。
ぐんぐんと差を縮め、あっという間に1位争いの2人組に並ぶ。
「えっ、すご、」
「速くない?金髪なの安達透だよね…?」
「なんか…かっこいいかも…」
そんな風にザワつく会場の声は、走っている俺に届くことも無く。
「安達行けー!!!」
「安達くん抜いてー!!!」
苺花と早柿を筆頭に、
「頑張れー!!!」
「あとちょっとー!!!」
「ふぁいとー!!!」
いつの間にかクラス中の応援を浴びた俺は、ゴール直前でさらに加速して、
見事1位を勝ち取った。