ヤンキー?なにそれ、美味しいの?
「もしもし!」
いおちゃんはワンコールで電話に出て、ものの数十秒で入り口まで駆け付けた。
「あれ、いおちゃん、先に帰ってたの?」
「うん、まーね。」
不思議そうに聞く苺花を横目に、いおちゃんは、安達くんの方を見る。
「ご丁寧に、ありがとう。」
「別に。じゃーな」
そっけない安達くんは、そのまま宿へと入っていった。
そんな安達くんの後姿を見つめ続ける苺花に、いおちゃんは不思議そうに声をかける。
「苺花?戻んないの?」
「あ!ううん、戻るよ!いこ!」
いおちゃんの方は、見れなかった。
平然を装うのがやっとで。
だって、だってね、
苺花、聞こえてしまったの。
「着物、可愛かった。」
安達くんの去り際の言葉。
聞こえないように言ったのかもしれないけど、でも。
・・・嬉しいんです。
一緒に回りたくて、お気に入りの着物を着た姿を見てほしくて、
苺花の希望は全部叶って、十分すぎるくらいにすっごい楽しい時間だったはずなのに。
それ以上の、嬉しいをくれる安達くんは本当にすごい。
安達くんの言葉は、
魔法みたいだね。