ヤンキー?なにそれ、美味しいの?

いつもの屋上じゃないからか、時間帯のせいなのか、

それとも、

さっきの女の子の会話が頭に残っているからか、


安達くんがいつもよりももっともっと格好よく見えてしまって、

頭に乗る手が、凄く優しい手に感じてしまって、

苺花は軽くうつむいた。


「外にも自販機あったと思うけど、見に行く?」


いつも通りの安達くんは、苺花に問いかけた。


「えっ、あ、うーん、でも、外出ちゃいけないって…」

「あーー、そうだよな、お前は。」


小さく笑ってそう言った安達くんは、苺花から手を放してしまって。

そのまま、玄関の方へ歩いて行ってしまった。


「安達くん、どこ行くの?」


自販機コーナーから出て行った安達くんを、追いかけて、声をかけると、既に玄関を出ていた、安達くんは振り返る。


「散歩。寝れねーし」


浅く被ったフードから少し見える鮮やかな金髪。

その髪は、外の空気でわずかに揺れていて、

ちょっと挑戦的な目は、苺花をドキドキさせるには十分で、


「・・・苺花も行く。」


安達くんに追いつきたくて、

遠い存在に感じたくなくて、


「お前は、そーだよな」


なんて、自分と違う世界にいるみたいなこと、言ってほしくなくて。


苺花は、ホテルの玄関から、足を踏み出しました。
< 84 / 215 >

この作品をシェア

pagetop