イチゴパフェ
不器用な男
「ごめんな。」
ぼーっと、窓の外を見つめる。
あまりにもぼーっとしすぎて、つり革をつかむ手が緩んで、体が大きく揺れる。
――いけない。
強く握りこんで背筋を伸ばす。
“日和”
秀が、私の名前を呼んだ。
それだけでとろけてしまいそうなほど幸せだったのに、抱きしめられて、キスされて。
右手の薬指にある指輪に目をやる。
石の意味は、いつか知ればいいやと思った。
秀がくれたことに意味がある。
あのとき…私たちが別れたとき、『受験に集中したいんだ。』と秀は言った。でもそれは違うだろうと思った。
これは秀の優しさ。私に飽きたということを伝えないようにした秀の優しさだと。
でも、それからしばらくして廊下ですれ違う秀がどんどん険しい表情になって。
もしかして、違う理由なんじゃないかと思いはじめた。