美男子の恋事情!
「出来れば今が良いんだけど……」
海生は「今じゃなきゃ駄目か?」と聞く俺に、申し訳なさそうに俯いた。
ここ二、三日。海生のサーブが芳しくない。
まだ“スランプ”とまではいかないが、このまま放っておいたらそうなるだろう。
と言っても、今まで海生は一度も俺に頼らず、自分で調整して乗り越えてきた。
もちろん、間違った方向にいかないように目は見張ってはいたが。
だから海生は強い。自分のテニスに自信があって試合中ブレることはない。
そんな海生が、初めて俺に見てくれと頼むということは、今回は一人じゃどうしようもないということだろう。
考えなくてもわかる。今、俺が何を優先すべきなのか。
口を開く。ゆっくりと。
「海生……」
そうだ。“コートに入れ。サーブ見せて見ろ”って言えばいいんだ。
俺は顧問なんだから。
「……」
でも、何でだ……言葉が出てこない。