美男子の恋事情!
それはある日ーー、雲行きは怪しく、風が冷たい春の日だった。
入部して三週間。
二度目の部長との試合は、一試合目同様ストレートで負けた。
何も出来ないまま、電光石火の如く。
『もう一度出直してこい。お前には期待してる』
部長はそう言い残してコートを後にした。
期待、だと……?
何も出来ないまま、ただ踊らされるだけ躍らされた俺に?
馬鹿にすんのもいい加減にしろよ……
拓真の励ましの言葉も耳に届かない。
当時の俺は、どの言葉も素直に受け取れずに落ちていった。
夕方に部活を終えると、灰色のコンクリートを呆然と見つめながら家までの道のりを歩く。
屈辱に打ちひしがれて、誰かと一緒に帰る気にもなれず拓真には先に帰ってもらった。
『雨、か…』
重い足をほぼ妥協で動かしていると、降り出した雨にとうとう足は止まった。
空を見上げる。
普段、あんなに澄み切って綺麗な青空はそこにはない。
あるのは、真っ黒な厚い雲だけ。
雨は容赦なく俺を打つ。
目を閉じて、それをただ受け止める。