美男子の恋事情!
「ねぇ、大ちゃん。今、大ちゃんが優先したいのは何?」
「は?」
海生は、ふぅ、と息を吐くと、俺を曇りのない目でジッと見据えてきた。
隙のない視線に一瞬戸惑ってしまう。
優先したいもの?
それは、もちろん海生のサーブを……
「違うよ。そうじゃない」
海生は俺の考えを見抜いてるかのように軽く首を振る。
「教師としてじゃなく、一人の男として。今、優先したいのは何?」
教師じゃなく、一人の男として……?
目を閉じる。
浮かぶのは、事故以降に見せた春香の生気のない顔。
そして、俺が守りたいと強く思った春香の笑顔だ。
「拓真は大ちゃんのこと天邪鬼だって言ってたけど、俺は不器用で鈍感なだけだと思うよ」
不器用で鈍感……か。
確かにそうかもしれない。
俺は兄貴として妹を守ろうと、良い兄貴でいようと、無意識に演じ過ぎていたんだと思う。
そのせいで、自分の気持ちに鈍感になった。
いや、気付かない振りをしていたんだ。